妊娠がうまくいかない原因のひとつとして、女性の卵管周囲に問題があるケースがあります。
卵管が狭くなったり塞がっていると精子が卵子へ到達できないため、妊娠するのが難しくなります。
これを改善するための手術が、卵管鏡下卵管形成術で、通称「FT」と呼ばれる手術です。
卵管鏡下卵管形成術(FT)とは卵管通過障害を改善する手術のこと
卵管鏡下卵管形成術「FT」は、卵管に閉塞や狭窄、通過障害が見られる女性に対して行う手術です。
卵管に閉塞や狭窄があると、卵子と精子が受精できません。
卵管は左右に2つあるので、片方に通過障害があったとしても、もう片方があるから大丈夫と考える方もいますが、必ずしもこの状態で妊娠ができるとも限りません。
というのも、一般的に排卵は左右2つの卵管から交互に行われますが、人によっては右から複数回排卵されたあとで左から排卵されることもあるので、必ずしも交互に排卵されるとは限らないためです。
また、通過障害がない卵管であっても、卵管の状態が悪くて卵子がうまく運ばれない場合もあります。
卵管には細かいヒダがあり、ヒダが動いて卵子が運ばれていくのですが、動きが悪いとうまく運ばれず、受精が困難になる可能性もあるのです。
閉塞や狭窄は、子宮内膜症などの疾患が原因となっている場合もありますし、先天的に通過障害を持っている方もいます。
卵管鏡下卵管形成術(FT)当日の流れ
卵管鏡下卵管形成術(FT)は日帰り可能
卵管鏡下卵管形成術(FT)と聞くと、何か難しくて時間のかかる手術なのでは?と不安になる女性も多いでしょう。しかし、実際には多くのレディースクリニックで行われており日帰りで受けられるため、それほど不安になる必要はありません。
手術そのものの所要時間は、10分から30分くらいです。手術前の準備や点滴、手術後の処置などを含めても1時間くらいなので、身体的に大きな負担もかからないでしょう。
手術の前に必ず聞かれると思いますが、既往症や飲んでいる薬があれば医師に伝える必要があります。おくすり手帳を持参するといいでしょう。
手術に用いる器具は、卵管鏡と呼ばれる内視鏡と、バルーンを内蔵した細いカテーテルです。内視鏡を取り囲むように作られたカテーテルを膣から挿入するため、お腹を切ることもありません。
卵管鏡下卵管形成術(FT)の流れ
典型的な卵管鏡下卵管形成術(FT)の流れを紹介します。
- 手術の前の準備(子宮頚管の拡張)
- 静脈麻酔(局所麻酔で行う医療機関もある)
- 麻酔をしていても無意識に体を動かす危険性があるため抑制帯で固定
- 生体監視装置で呼吸抑制に対する監視
- 手術中の痛みの処置として鎮痛剤注射
- 膣から子宮内まで子宮鏡を挿入し、卵管入り口に近づける
- 卵管腔内にカテーテルを挿入し、バルーンを押しだす
- バルーンを押しだして詰まっているところを拡げ、内部の状態を確認
- 術後の痛みの処理として座薬などを利用
- 感染予防に抗生物質の内服
卵管鏡下卵管形成術(FT)をするのはいつがいい?
排卵後は子宮内膜が厚くなっている可能性があります。子宮内膜が厚くなっていると卵管の入り口が見えにくく、施術しにくい状態です。
月経の間際は子宮内膜が出血傾向にあるので、卵管鏡下卵管形成術(FT)を行う時期は、月経が終了してから次の排卵の前に行うのが適切と言われています。
なお手術を行うことで卵管の開通率は80%くらいと言われ、そのほかに不妊の原因となる症状や疾患などがなければ、妊娠の可能性が広がることになります。
もしこの手術を行っても卵管障害が改善されない場合や、手術できない場合には、体外受精などの不妊治療方法も考えましょう。
利用する医療機関にもよりますが、卵管鏡下卵管形成術(FT)を行い、半年以上たっても自然妊娠しない場合、体外受精を勧める医療機関が多いようです。
卵管鏡下卵管形成術(FT)は手術費用は?保険適応可能!
卵管鏡下卵管形成術(FT)を受けようと考える妊活カップルにとって、気になるのはやはり費用でしょう。
まず卵管閉鎖といった診断を受けた場合には、治療は保険適用となります。ただし、ある程度の費用がかかるので「限度額認定証」の申請を行い、自己負担限度額での支払いができるようにしておくと安心です。治療前に申請しておけば自己限度額内の支払いで済みます。
申請していない場合でも病院窓口でいったん支払いを行い、その後に高額療養費支給申請を行えば、後日差額が戻ってきます。窓口での支払いをなるべく少なくしたいという人は、高額療養費支給申請を行う方が良いでしょう。
限度額適用認定証の申請は加入している健康保険制度によっても異なるため、保険証記載の保険者、若しくは市区町村の窓口に確認しましょう。一般的に発行期間は、即日から7日程度となるようです。
卵管鏡下卵管形成術(FT)に副作用やリスクはあるの?
卵管鏡下卵管形成術(FT)は30分程度で終了する手術なので、それほど不安になる必要はありません。しかし、リスクや副作用が全くない手術はありません。どんな手術でもリスクと副作用があるので、よく理解してから手術を受けるようにしましょう。
卵管鏡下卵管形成術(FT)の副作用とリスク
- 器具を利用して手術するため、挿入に伴って出血や疼痛が出る可能性もある
- 器具を挿入する際、卵管壁の穿孔(穴が開く)等、合併症のリスクがある
- 麻酔や鎮痛剤、予防的な抗生物質の投与でアレルギーを起こす可能性がある
- 感染症があると再燃や拡大のリスクがある
卵管鏡下卵管形成術「FT」はリスクもあることに注意
ここまで述べてきたように、卵管鏡下卵管形成術「FT」は日帰りで受けられる手術だとはいっても、リスクはありますし、成功率は100%ではありません。これらのことを踏まえたうえで、男性パートナーと十分に話し合って手術を受けるかどうか決めましょう。