不妊治療の流れはステップアップ治療が一般的。検査や治療内容を紹介

不妊治療に取り組む

不妊治療にはいくつかの段階が設けられており、段階ごとに手段を変えて行う「ステップアップ治療」が一般的となっています。
本記事では不妊治療の流れやステップアップ治療の段階、それぞれの治療内容について紹介します。

不妊治療の流れ!ステップアップ治療が一般的?

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近年、晩婚化を背景として初産を迎える年齢が男女ともに高くなっている傾向があります。自然妊娠を希望しても子どもを授かることができず、不妊の検査を受ける夫婦や不妊治療に踏み出すカップルも増加傾向にあるのです。

35歳前後から自然に妊娠する力が弱くなり、30代後半になると妊娠する力が急激に弱まり、流産する確率も増加すると言われています。「年齢を重ねるごとに妊娠にしにくくなる」といわれていますが、実際には「年齢を重ねると自然妊娠しにくくなり、不妊治療を行っても妊娠しにくい場合がある」と考えることが必要です。

不妊治療は年齢や身体の状態などによって適した治療方法が異なります。不妊治療に取り組む際には医療機関で自分の状態を確認し、専門医の元でしっかり治療に向き合うようにしましょう。

不妊のステップアップ治療とは?

不妊のステップアップ治療は検査によってなぜ妊娠できないのかを確認し、一般的に最も負担の少ないと考えられる不妊治療から開始します。その治療を一定の期間行っても妊娠しない場合は次の段階に移ることを繰り返し、段階的に治療方法を変えていく治療がステップアップ治療です。

人によって年齢も身体の状態も違いがあるため一概には言えませんが、一般的に治療を5周期から6周期行い結果が出ない場合は次の段階にステップアップし、2年以内で結果を出すことが望ましいといわれています。

ステップアップ療法

35才未満の女性の一般的な不妊治療の流れ

40代未満の女性が不妊治療を行う場合は、タイミング法を3周期程度おこない妊娠しなければ人工授精をおこないます。ここまでが一般不妊治療の範囲です。

40代未満の女性の場合は、40代以上の女性よりもタイミング法や人工授精によって妊娠する可能性が高いため、特別な病気などがない場合は一般的なステップアップ治療が行われます。

それでも妊娠しない場合は、高度生殖医療となる顕微授精か、凍結融解胚移植、もしくは体外受精を試みることになります。

40代以上の女性の一般的な不妊治療の流れ

40代以上の女性が不妊治療を受ける場合の一般的な流れ、治療を段階的に行っても妊娠率が低く、妊娠しても流産する可能性が高い傾向にあるため、妊娠を希望する方の身体の状態を確認し、タイミング法などを行わず顕微授精へ移行する場合もあります。

高度生殖医療の顕微授精や凍結融解胚移植、体外受精の方はタイミング法よりも妊娠する確率が高いためです。

【不妊治療の流れ第1段階】一般不妊治療の治療内容

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不妊治療の第一段階となる一般不妊治療の流れを解説します。基本的には検査を行ってから不妊治療がはじまります。

その1.病院での検査でやること

病院で行う一般的な検査の流れです。妊娠を希望する方は、普段から基礎体温(婦人体温計を利用すること)を付けておくと初診時からすぐに他の検査ができる場合もあります

基礎体温を測定する

婦人体温計で基礎体温を測ることで、排卵があるかまたは黄体機能不全などの可能性を診ることができます。

排卵日の予想は難しいと言われていますが、低温期の最終日から上昇期の3日間に排卵が多いといわれており、基礎体温高温期が10日以下の場合は黄体機能不全であるケースも考えられます。

「基礎体温の測り方」
基礎体温は婦人体温計を利用して口の中の温度を測ります。最近は日々のデータを記録してくれる便利な婦人体温計があるので利用してもいいでしょう。

薬局やドラッグストア、インターネットなどで手にいれることができる基礎体温表を準備し、可能であれば3周期分(1周期では安定せず参考にしにくいため)医療機関にもっていきます。

  1. 朝起きたら身体を動かす前に婦人体温計を舌の裏側の付け根に充てます
  2. 舌で婦人体温計を抑えて口を閉じ計測します(口呼吸しないように)

ホルモン検査

月経がはじまって4日目までに血液を採取し、ホルモンの基礎値を調べる検査です。ホルモンの値を確認することで排卵障害の排卵部位など知ることができます。

卵管の検査

卵管の検査は疎通性検査と呼ばれる「子宮卵管エコー図検査」を行います。卵管に造影剤を入れ超音波を利用し卵管がきれいに通っているか確認する検査です。結果がよくない場合は、子宮卵管造影を行うことになります。

精子の検査

女性の検査と並行しパートナー男性の精液検査も行います。病院または自宅で精子を採取し(3時間以内に病院へ精子を運べる場合は自宅でもいい)、精液内の精子の濃度や運動率などを検査します。ここで異常が見つかった場合には、LH、テストステロン、FSHなどのホルモン検査などを行うケースもあります。

ヒューナー(フーナー)テスト

ヒューナー(フーナー)テストは「夫婦間適合性検査」と呼ばれるもので、性交した翌日に女性の頸管内に元気な精子が存在しているかどうかを確認する検査です。

1周期のみで検査することはできないので、1周期、2周期と2回行い元気な精子の存在を確認します。検査の結果運動精子が見つからない場合は、抗精子抗体があるかを調べる検査も必要です。

その2.タイミング法でやること

タイミング法は妊娠しやすい時期を医師に確認してもらい、排卵日の2日前から排卵日の間にタイミングを合わせて性交することで、妊娠する確率を高める方法です。

医療機関でエコーを使い卵巣の様子を確認して排卵を見極める必要がありますが、排卵の時期を確認し性交するため卵子と精子が出会う確率が高くなり、妊娠する可能性も高くなります。

タイミング法は1周期から妊娠する確率が徐々に下がっていくため、6回以上行って妊娠しない場合は次のステップに進むことが望ましいとされています。

その3.人工授精でやること

人工授精はステップアップ治療の一般不妊治療です。タイミング法でも妊娠しない場合は人工授精へ移行しますが、年齢や身体の状態によっては高度生殖医療に移行する場合もあります。

パートナーの男性から採取した精液の中から元気で運動率のいい「運動良好精子」を取り出し濃縮します。濃縮させた精子を妊娠しやすいタイミングを見計らい子宮内に直接注入する方法です。

妊娠に至るプロセスは自然妊娠と同じで、精子が卵子と結合し子宮内膜に着床すれば妊娠となります。

人工授精で妊娠する確率は日本生殖医学会の「生殖医療の必修知識」によると、1回あたり10%程度といわれています。また、人工授精による治療は内服・注射による排卵誘発薬による卵巣への刺激や、排卵を誘引する薬物療法、さらに子宮内膜症の外科治療なども含まれます。

【不妊治療の流れ第2段階】高度生殖医療(ART)の治療内容

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一般不妊治療となるタイミング法や人工授精によって妊娠しない場合や、年齢や身体の状態により一般不妊治療ではない方法が望ましい場合は、高度生殖医療に移行します。

高度生殖医療はAssisted Reproductive Technology「ART」と呼ばれる治療法で、精子と卵子を体外で受精させ数日後に受精卵として子宮に戻す「胚移植」治療です。胚移植治療には体外受精と顕微授精の2つがあります。

体外受精でやること

同じ培養液内に卵子と精子を入れ培養し受精させ、受精卵となったものを子宮内に戻す方法です。一般不妊治療で妊娠しない方や、卵管の完全閉塞があり他の方法で妊娠ができない場合、また重症男性不妊症がある場合に対象となります。

卵子と精子を受精させ、一般的には48時間から72時間後に子宮に戻し着床させます。着床から出産までの過程は通常の妊娠同様です。

顕微授精でやること

元気がよく運動率のいい正常な形の精子を卵子の中に注入します。卵細胞室内精子注入法「ICSI(Intracytoplasmic sperm injection)」という方法が一般的です。

顕微授精は体外受精では受精しない可能性が高い、受精障害・重症精子減少症・重症精子無力症などの症状がある場合に実施されます。しかし、女性の年齢などを考慮し検査からタイミング法などを行うことなく、体外受精や顕微授精を行うこともあります。

体外受精・顕微授精の高度生殖医療で妊娠し子どもが生まれる確率は、総治療あたり平均11.7%です。高度生殖医療にも年齢が関係していると言われており、日本産科婦人科学会の2015年ARTデータブックによると、高度生殖医療を行った場合、32歳くらいまでの年齢であれば子供が生まれる確率は20%ですが、40歳を過ぎると子供が生まれる確率が7%から8%に減少するようです。

しかし、高度生殖医療「ART」による妊娠率は人工授精と比較し4倍から5倍といわれていますので、妊娠を臨むカップルにとって心強い方法だといえます。

高度生殖医療を利用する際の1回あたりの費用は自費診療となるため各医療機関によって異なりますが、体外受精・顕微授精を対象とした最大15万円までの公費助成制度もあり、申請によって助成を受けることができます。(所得制限・年齢制限など条件あり)

不妊治療は年齢や身体の状態によって変化する

晩婚化が進み初産の年齢が高くなったこともあり、不妊に悩むカップルが増加しています。生活習慣や人生設計の観点からも妊娠するタイミングがつかめない方が多いといわれていますが、不妊治療や年齢と妊娠の関係などを見ると、妊娠するために年齢を考慮するのが重要です。

今回ご紹介したステップアップ治療法は、年齢や身体の状態を考慮して段階的に治療内容を移行する治療方法です。例え高齢出産になる場合でも、ステップアップ治療法であれば自分にあった治療方法を試すことが可能なため、不妊治療の選択肢にいれてみてはいかがでしょうか。

不妊治療の方法や流れを理解し、健康的な妊娠・出産となるように自分の身体年齢を考慮し、妊娠について考えてみましょう。

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