いざ子どもが欲しいとなり妊活をはじめたものの、なかなか授かることができず、不妊に悩む夫婦が増えています。
とはいえ、不妊治療は検査から治療までに多額の費用がかかったり、肉体的にも精神的にも負担が大きくなることも。
ここでは、これから不妊治療に踏み出すカップルのために、意外に多い不妊治療に悩むカップルの現状をお伝えします。
不妊に悩む夫婦の割合は30%以上?
妊活や不妊治療ということば一般に浸透した現在、不妊に悩む夫婦・カップルの割合は以前と比較して上昇傾向にあるといわれています。
不妊専門相談センターへの相談件数が高止まり
厚生労働省が行っている「不妊専門相談センター」事業への相談件数は、年間20,000件以上で高止まりしています。
不妊専門相談センター事業は全国の各自治体が運営しており、基本的には誰でも無料で相談ができます。そのため、夫婦に限定せず幅広いパートナーシップを持つ方々からの相談を受けていると思われます。
結婚しているカップル(夫婦)の30%以上が不妊に悩んでいる
国立社会保障・人口問題研究所が5年ごとにおこなっている「出生動向基本調査」の2015年版データによると、不妊に悩んだり不安を持っている夫婦は全体の35%になり、2002年の26.1%にくらべて大きく上昇しています。
次に、このデータを子どもがいない夫婦に限ると、半数を超える55%の夫婦が不妊について心配していることがわかります。
また、この表から、すでに子どもが1人いる家庭でも、2人目ができないことに悩む夫婦が多いことがわかります。
不妊の悩みは現代の夫婦にとって、とても深刻な問題となっているといえます。
不妊に悩む夫婦の割合が増える背景
不妊に悩む夫婦が多くなっている背景には「晩婚化」があると言われています。
「人口動態統計」によると平均初婚年齢は、1975年の女性は24.7歳ですが、2015年には29.4歳に、また男性も同様に1975年の平均初婚年齢は27歳ですが、2015年には31.1歳と晩婚化が見て取れます。
平均初婚年齢の年次推移 | 女性(歳) | 男性(歳) |
---|---|---|
1975年 | 24.7 | 27.0 |
2000年 | 27.0 | 28.8 |
2010年 | 28.8 | 30.5 |
2015年 | 29.4 | 31.1 |
また、晩婚化に伴い、第一子出産時の年齢も「高年齢化」しています。
2018年の「人口動態統計」では第1子出生時の母の平均年齢は30.7歳、男性の平均年齢は32.8歳です。
しかし、1985年の第1子出生時の女性の平均年齢は25.7歳、男性の平均年齢は28.3歳となっており、第1子出生の平均年齢が男女共に高くなっていることがわかります。
第一子出生時の平均年齢 | 女性(歳) | 男性(歳) |
---|---|---|
1975年 | 25.7 | 28.3 |
2000年 | 28 | 30.2 |
2010年 | 29.9 | 32 |
2018年 | 30.7 | 32.8 |
結婚する年齢が高くなれば第1子出生の年齢も高くなり、結果的には不妊に悩む夫婦が増加することにもつながっているといえます。
不妊に悩む夫婦が不妊治療を受ける割合は50%?
また先ほどの「出生動向基本調査」では、実に「不妊に悩む夫婦の約半分が不妊治療を経験したことがある」と、明らかになっています。
また、結婚持続時間が長くなるほど、不妊治療を経験したことがある夫婦も増えていきます。高齢化による妊娠率の低下もあると見受けられますが、実際は、結婚後早い段階から妊活として不妊治療に取り組んでいるようにも考えられます。
半数の夫婦が不妊治療に踏み出せない理由
不妊に悩む夫婦の約半数が不妊治療を経験したことがあるいっぽうで、不妊に悩みながらも不妊治療に踏み切ることができない夫婦が半分ほどいるのがわかります。
それは、不妊治療に踏み出すことをためらう現実的な問題がいくつか存在するためです。
費用の問題:不妊治療は健康保険適用外の治療が多く高額になる
まず、不妊治療にかかる費用が高額になってしまう問題があります。不妊治療の基本的な検査や治療については保険が適用されます。
しかし、詳しい検査が必要だったり、人工授精や顕微授精、体外受精などのより高度な治療が必要な場合は、保険適用外となり治療期間が長くなる傾向にあるため、総合的にかかる費用が高額になる可能性があります。
一般的にどの程度の治療費が必要かというと、不妊治療を受けている半数以上が100万円以上の費用をかけていると言われています。不妊治療を行っているカップルの中には、500万円以上という高額な費用がかかっているケースもあるようです。
例えば、人工授精は1回の治療で1万円から5万円程度ですが1回の治療で着床することは難しく、複数回の治療が必要となる場合が多く、最終的に5万円から50万円程度かかることもあるため、決して安価な治療とはいえないのです。
仕事の問題:仕事と妊活の両立がむずかしい。
夫婦共働きのスタイルが増加しているなかで、仕事と妊活の両立がむずかしく、妊活を断念するケースもあります。女性が結婚してからも責任のある立場にあるため出産育児休暇が取得しづらいといった理由や、男性の職場での勤務制度や雇用形態が妊活にあっておらず、不妊の悩みにつながっていると考えられています。
肉体的・精神的ストレスの問題:女性に負担が大きくのしかかる不妊治療
不妊治療は費用的な面以外に、精神的・肉体的に疲労も多くなり、女性にとってつらい治療となることも多く、妻が治療をやめたいと考える夫婦も多いようです。逆に、夫が不妊治療ではなく自然妊娠をしてほしいということから、人工受精や体外受精に協力的ではなく、お互いに疲弊してしまうということもあり、不妊治療はカップルにとって非常に難しい問題といえるのです。
不妊治療に取り組むために制度を活用しよう!
近年の日本では、人口減少社会が問題となっているため、次世代育成支援対策推進法などさまざまな国家施策によって、妊娠や子育てを支援する制度や取り組みがあります。
特定不妊治療の助成金制度を活用
不妊に悩む方々への特定治療支援事業として、経済的負担の軽減を図るため、不妊治療費用の一部支援が行われています。
支援の対象となる方は以下のような条件に当てはまる夫婦です。
- 特定不妊治療以外の治療法で妊娠の見込みがない、若しくは極めて少ないと「医師に診断」され、法律上婚姻をしている夫婦
- 治療期間初日における妻の年齢が43歳未満である夫婦*
支援の対象となる治療は「体外受精及び顕微授精」(特定不妊治療)で、給付については所得制限730万円(夫婦合算の所得ベース)のほか、以下のような条件があります。
- 特定不妊治療の費用に対し1回15万まで助成。(凍結胚移植(採卵を伴わないもの)等については7.5万)通算回数・・・初めて女性を受けた際の治療期間初日の妻の年齢が40歳未満の場合は6回(40歳以上である場合は通算3回)、平成25年度以前から支給を受けている場合で平成27年度までに通算5年女性が受けている場合はなし
- 初回治療に限り30万まで助成。(凍結胚移植(採卵を伴わないもの)等は除く)
- 特定不妊治療の中で精子、精巣または精巣上体から採取する手術を行った場合、1.2.のほか、治療1回につき15万まで助成。(凍結胚移植(採卵を伴わないもの)等は除く)
- 3.のうち、初回治療に限り30万まで助成。
こうした支援を活用できる夫婦であれば、不妊治療の経済的負担を軽くすることができます。
子供が欲しいけれど経済的に不妊治療ができないと考えているカップルにはぜひ利用してほしい支援制度です。
*令和2年4月の新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、不妊治療の延期が学会から推奨されていることを受けて、診療開始時の妻の年齢を44歳未満に引き上げる特例措置が実施されます。
育児・介護休業法が令和3年から施行
平成29年10月に改正された「育児・介護休業法」により、育児休暇をより長くより柔軟に取得できるようになります(令和3年1月1日施行)。
育児・介護休業法改正のポイント
- 育児休業が子どもが最長2歳になるまで取得可能になります。
- 育児休業制度を事業者が個別従業員に周知する努力義務を持たせる制度が新設。
企業への助成金:両立支援等助成金の加算
政府が平成22年から推進している「イクメンプロジェクト」に関連して、男性の育児休業の取得や育児短時間勤務の利用を推進するために企業に対して「両立支援等助成金」を支給し、育休取得を後押しする制度があります。
とはいえ、平成30年度時点で、男性の育児休業取得率は6.16%と昔に比べて増えてはいるものの、女性の82.2%には遠く及びません。また、男性の育休期間は、5日未満が56.9%、5日以上2週間未満が17.8%、2週間から1月までが8.4%とかなり短い期間です。
そのため、令和2年度(2020年度)は、両立支援等助成金に「個別支援加算」が上乗せされます。条件としては、「男性の育児休業を取得しやすい職場風土づくりの取組に加えて、対象男性労働者に対し、育児休業取得前に個別面談など育児休業の取得を後押しする取組を行った場合」に、中小企業で1人目の育児休業取得の場合に10万円が加算されます。
不妊に悩む夫婦は多い!支援制度を活用して不妊治療を!
不妊に悩む夫婦の割合は30%以上と多いのが日本の実情です。不妊に悩んでいるのはあなた方だけではありません。
不妊治療に対する国の支援や企業の支援などの情報を収集しつつ、できる限り経済的・精神的・肉体的な負担を少なくすることを考えながら、不妊治療の準備を進めていきましょう。