妊活をはじめようとすると、いままで治療のために続けてきた薬を飲み続けてもだいじょうぶか、気になりますよね。
風邪っぽいときや、胃があれているように感じるときに、薬を飲もうかどうか迷うことも多いはず。
この記事では、妊活をはじめるときや、妊活中に飲んでもいい薬、飲んではいけない薬について紹介します。
病気を治療中の方は、妊活をはじめていいか医師に相談を
薬を飲んでいる方は、現在なにかの病気を治療中の方だと思われます。そのような方は妊活をはじめる前に、かかりつけのお医者さんに妊活をはじめていいかどうか、ぜひ相談してみることをお勧めします。
「なるべく早く妊活したいのか」や「できれば30歳になる前に子どもが欲しい」とか時期についても、ぼんやりとでいいからイメージして話しましょう。
これからの治療方針や治療予定あるいは薬の種類や量を見直すきっかけになるかもしれませんよ。
ちなみに、病気を治療中の方が妊娠した場合に考えられるリスクは以下のようなものがあります。
病気を治療中の方が妊娠した場合に考えられるリスク
- 妊娠により母親の病気が悪化する
- 母親の病気により妊娠を継続できなくなる
- 母親の病気により胎児・赤ちゃんに悪影響をおこす
- 母親の治療薬が胎児・赤ちゃんに悪影響をおこす
これらをふまえて、お医者さんに相談してみるとよいでしょう。
妊娠初期への薬の影響
妊娠初期症状は本人にもわかりづらいため、「気づいたら妊娠していて、じつは薬を飲んでしまっていた」という女性は意外に多いといいます。
だいたいの女性は妊娠2カ月目ぐらいに気づいたり、妊娠検査薬でわかったり(判定可能になるのは妊娠約4週目以降)するものだからです。
じつは、この妊娠2カ月目(妊娠4週から7週)は、もっとも薬の影響を受けやすい時期だといわれています。
というのもこの期間は胎児の身体がつくられる器官形成期であるため奇形をおこす影響がありえます。
なお、催奇形性が確認されているのは、ワルファリン、ミコフェノール酸、メソトレキセート、抗てんかん薬などがあります。
いっぽう、妊娠1カ月目までは薬の影響はほとんどないと考えられています。
なので、妊活をすでにはじめていて、妊娠の可能性がゼロではない場合は、飲む薬に注意しましょう。
予防接種について
妊活中あるいは妊娠初期には予防接種を意識しないといけません。
とくに風しんはかかってしまうと、赤ちゃんへの影響が大きいため注意が必要です。
インフルエンザ予防接種
インフルエンザワクチンは母親から子どもへの感染が国内では確認されておらず、妊娠中であっても予防接種は可能です。
ただし、時期や回数などに制限がありますので、早めにかかりつけのお医者さんに確認しておきましょう。
風しん予防接種
風しんは、妊娠初期の妊婦がかかると、胎児の目や心臓、聴覚などに障害のある先天性風しん症候群を抱えた赤ちゃんが生まれる可能性があります。そのため、父母ともに妊活前の風しん予防接種が勧められています。
自治体によっては、風しんの抗体検査(抗体があるかどうか、抗体量は充分かを検査)や予防接種の費用を助成しています。お住まいの自治体のホームページを確認してください。
また、風しんの予防接種をすると2カ月避妊する必要があります。
したがって、これから妊活しようというカップルは早めに風しんの抗体検査・予防接種をしましょう。
【種類別】妊活中に飲んでだいじょうぶな薬、飲んではダメな薬
ここでは妊活中に飲んでだいじょうぶな薬とダメな薬をご紹介していきます。
なお、だいじょうぶな薬を飲んだ後でも、早めにお医者さんにそのことを報告し、相談しましょう。また長期にわたっての服用も厳禁です。
また、覚えておきたいのは、お腹の赤ちゃんに薬が影響するかどうかという試験は倫理的にできません。
そのため臨床試験のデータはほぼないということを覚えておきましょう(だからといって、なんでも飲んでいいというわけではありません)
なお処方箋なしにドラッグストアで買うことができる医薬部外品や医薬品には添付文書が必ず付いています。使用上の注意をよく読んで、妊娠や妊婦に関する注意事項を守りましょう。
鎮痛薬(解熱・痛み止め)
ロキソニンやイブなど鎮痛剤はいろいろありますが、妊活中に飲んでもいいとされる鎮痛剤は比較的弱めの薬です。
比較的安全といわれるのは「アセトアミノフェン」という成分で、薬品名だとカロナールがあります。市販薬では同じ成分のノーシン錠になります。
かぜぐすり(風邪薬)
鎮痛薬と同様に、「アセトアミノフェン」を主成分とした薬を飲みましょう。ただし、長期の服用や、複数の薬を一度に飲むのは禁物です。
また、高熱などが発生した場合にはインフルエンザや、ひどい咳の場合は子宮収縮も起こり気管支や肺などの病気の疑いがあります。風邪がなかなか治らないときなども含めて、早めにお医者さんに診てもらいましょう。
花粉症の薬
花粉症の薬は、アレルギーを抑えるために抗ヒスタミン薬などが一般には用いられていますが、妊活中はなるべく避けた方が無難です。
ただし、どうしても服薬したいときは、妊娠中でも使える薬がありますので、かかりつけのお医者さんに相談しましょう。
また、点鼻薬や点眼薬は、飲み薬よりも成分が血液へ入りづらいため、胎児や赤ちゃんへの影響は少ないと考えられています。
予防対策(マスクや帽子の着用、手洗い・うがいの徹底、花粉を家に持ち込まないなど)をすることで、症状を軽減していきましょう。
胃薬・便秘薬・止瀉薬
一般的には、市販薬の胃薬は一回程度なら使っても問題ないといわれています。
とはいえ、妊娠の可能性がある場合には使用をなるべく控えて、お医者さんに相談しましょう。
なお、ビオフェルミン錠剤は成分がビフィズス菌で、乳幼児にも処方されるお薬なので、安心して飲みましょう。
目薬(点眼薬)
目薬の成分は吸収され、血液によって運ばれ胎児にも移行しますので、本来的には注意が必要で、なるべく使えわない方がいいといわれています。
しかし、現実的には点眼量が微量であるため全身にいきわたる量が少ないことや、結果として異常妊娠・異常出産の確率が点眼の有無で変わらないことから、点眼してもそれほど問題はないと考えられています。
ただし、チモプトールという緑内障の点眼薬ではぜんそく患者の方が死亡した例が報告されています。
点眼薬を使うときには、お医者さんに相談しましょう。
肩こりの薬
肩こりの際に使用する湿布(シップ)などの外用薬には、鎮痛薬が含まれていますが、お勧めは「サリチル酸メチル」を主成分としたものです。内用薬は「アセトアミノフェン」の飲み薬がいいでしょう。
また、腰などにもこりや痛みを感じて湿布を使いたくなることがあると思います。胎児のいる場所と近いので直接届かないかと心配になってしまいますが、問題が起こる可能性は少なく、だいじょうぶです。
湿布で皮膚に浸透した成分は、一部が血液に入り全身にいきわたり、その一部が胎児に届きますので、量としては微量です。ただし、用法用量は必ず守りましょう。
精神神経用薬
精神疾患にはさまざまな薬剤がもちられていますが、妊活時にはっきりと安全性が確認されている薬はありません。抗うつ薬のなかでもSSRIは妊婦に用いられことは多くあります。ただし、パロキセチン(パキシル:グラクソスミスクライン)は先天性心疾患のリスクを増やすことがしられています。
妊娠後期に抗うつ薬を使用すると、赤ちゃんに影響が出ることも報告されていますが、妊娠初期あるいは、それよりも前の妊活時にはあまり影響はないといわれています。
なお精神神経用薬を常用していて、妊活をはじめたいと思うときは、かかりつけのお医者さんに相談しましょう。治療の段階や症状に合わせて、より妊活に適した薬に変えてもらえたり、減薬を勧められることがあるかもしれません。
また、精神科や心療内科と産婦人科の連携も非常に重要です。こうしたこともふまえて先生に相談しましょう。
漢方薬
漢方薬が妊娠に悪影響を与えたという報告はありません。ただし、漢方薬すべてが安全というわけではありません。誤った使用方法をしてしまうと漢方薬はさまざまな副作用が発現することがあります。妊婦に対する安全な使用方法が確立しているわけではありません。
漢方薬を服用する際は、医師のアドバイスのもと行いましょう。
サプリメント
妊活時にはさまざまな栄養成分が必要となるため、さまざまなサプリメントからいろいろな種類の栄養成分を摂取していることと思います。
そのなかでも、気をつけたいのがビタミンA。
妊娠初期に大量摂取すると、胎児の先天異常の危険性が高まることが報告されています。摂りすぎには注意しましょう。
男性が飲んだ薬が胎児・赤ちゃんや妊活へ与える影響
男性が飲んだ薬が精子に影響を与える可能性はあり、受精した精子が受精卵ひいては胎児に影響を与えることはありえます。
代表的な薬は、C型肝炎ウイルス治療薬の「リハビリン」と古い睡眠薬である「サリドマイド」で、いずれも胎児・赤ちゃんの催奇形性が報告されています。
なお、精子形成期間はおよそ70日~80日ですので、この期間より前に服用していれば、上述のような影響の可能性があります。
反対に、1日2日では、服用してもすぐに精子に影響を与えることはありません。
その他にも、薬剤の影響を受けた精子が、受精能力がなくなったり、受精しても着床したいことが多くなると考えられています。
また、薬剤によって性欲減退や勃起障害などになることも報告されています。いずれの薬も副作用として顕れることが多いので、添付文書をよく読んでから使用しましょう。
妊活中に薬を使う前に、お医者さんに相談しましょう!
これから妊活をはじめようとするカップルや、現在妊活中のカップルの方々向けに飲んでいい薬と飲んではいけない薬について紹介しました。
いずれも、産婦人科であれば、影響の少ない薬を処方してくれたり、対処法を教えてくれるはずです。
これを飲んでいるのがわかったら恥ずかしいな、と思わずに、かかりつけのお医者さんに相談しましょう。
<参考文献>
順天堂大学医学部附属静岡病院 産婦人科「こうのとりくらぶ」Vol.45 2017春号
社団法人 愛知県薬剤師会 妊婦・授乳婦医薬品適正使用推進研究班 発行「「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版) 平成 24 年 12 月
NHK健康チャンネル「妊娠中のかぜ薬や持病の薬、鎮痛薬の使用方法と胎児への影響」
聖隷浜松病院薬剤部「ゆりかご~妊娠中のお薬の使い方~」
一般社団法人北海道薬剤師会公式サイト「男性が服用した薬剤の妊娠・胎児への影響」