2020年4月現在、妊活をされている方々のあいだで、特に気になる話題が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ではないでしょうか。
とりわけ、新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)が妊活にどのような影響があるかということだと思います。
そこで、現時点での国や専門家機関などの注意喚起の情報をまとめつつ、現時点で得られた情報をもとに、新型コロナ感染症が猛威を振るう中で、どのように妊活をしていけばいいかを考えます。
新型コロナと妊活の情報について、国や専門家機関の情報まとめ
妊活に新型コロナはどのように影響するのでしょうか。ここでは本記事執筆時点(2020年4月6日)での国や専門家機関からのお知らせや提言をまとめます。
日本産婦人科感染症学会からのお知らせ
妊活をされている方であれば、2020年2月に日本産婦人科感染症学会から出された「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について 妊娠中ならびに妊娠を希望される方へ」をご存知の方々が多いかもしれません。
この勧告はたびたび改訂をくわえられ、本記事執筆時点(2020年4月6日)では、第8版(2020年3月31日発行)となっています。
第8版の要点では、妊婦さんに対して新型コロナ感染の疑いがある場合は、妊婦検診を受診しないようになどの具体的な行動自粛を推奨する内容が含まれています。
いっぽうで、妊活中の男性・女性への明らかな行動自粛要請内容は明記されていません。
なお、「妊産婦、妊娠を希望する方へのアドバイス」では、武漢市内での妊婦感染例についての内容があり、
2月12日付のLancetの報告では、武漢市内で妊娠後期にCOVID-19に罹患した妊婦9例の解析で経過や重症度は非妊婦と変わらず、子宮内感染は見られなかったとしています
と記されています。絶対安心できるということではありませんが、事実として知っておきましょう。
厚生労働省からの提言
2020年4月1日には厚生労働省から「妊婦の方々などに向けた新型コロナウイルス感染症対策」をとりまとめた、というアナウンスがありました。
そのなかで、妊婦向け新型コロナ対策をまとめたリーフレットがリリースされています。
その名の通り、妊婦向けの内容ですので、ここでは詳細な内容の紹介は割愛します。
日本生殖医学会からの不妊治療自粛要請
厚労省と同じく2020年4月1日に日本生殖医学会から声明が発表され、その中で「不妊治療の延期を選択肢として患者さんに提示していただくよう推奨する」とかかれています。
またこのような声明は日本のみではなく、非営利国際機関であるICMART(世界各国のARTのデータ収集・分析・普及をおこなう機関)も「今後新たな情報が得られるまでの間、新規治療の開始を見合わせること、不妊治療に関連するその他の非緊急処置をすべて延期することを推奨いたします。」との声明を発表しています。
もちろん不妊治療をおこなっているカップルのご意向もあると思いますので、直ちにすべてを中止というのは難しいかもしれません。
自分だけで判断して投薬などを止めるのではなく、まずはパートナーや主治医とよく相談しましょう。
<2020年4月20日追記>
日本生殖医学会から「「新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大に伴う令和 2 年度における 「不妊に悩む方への特定治療支援事業」の取扱い」について 」というリリースが発表されました。
そのなかに、2020年4月9日に厚生労働省が、今年度に限り国が助成する治療費助成の年齢上限を緩和するとされています。具体的には、43歳未満のところが44歳未満となります。
<2020年6月5日追記>
日本生殖医学会から「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する日本生殖医学会からの通知 (2020 年 5 月 18 日版) 」というリリースが発表され、感染防御・感染拡大防止の対策を可能な限り行ったうえで不妊治療の再開を考慮するよう、通知がなされています。
そもそも新型コロナとは
中国で2019年12月末に公表された湖北省武漢の「原因不明の肺炎」が、翌2020年1月7日に新種のコロナウイルス(2019-nCoV)が原因であることがわかり、遺伝子も同定されました。
WHO(世界保健機関)は2020年2月11日、このウイルスによって引き起こされる疾患名をCOVID-19としました。そののち、中国から全世界に広がり、2020年3月11日にWHOは「パンデミック宣言」をするに至っています。
病気の名称については、コロナや新型コロナ、新型コロナ肺炎などいろいろな呼び名がありますが、「新型コロナウイルス感染症」と国や自治体で呼ばれています。
新型コロナはどうやって感染する?
現時点では、感染している人からの「飛沫感染」か、ウイルスに触れた手で口や鼻を触ることによる「接触感染」で感染すると考えられています。
なぜ新型コロナが話題になるの?
世界的に流行していることや、著名人が新型コロナ感染症にかかり死亡したことなども考えられますが、現時点で抗ウイルス薬などの有効な特異的な治療法がないことが、大きい理由であると考えられます。
考えられる妊活への新型コロナの影響って?
テレワークの増加でタイミングがとりやすくなる!?
新型コロナ感染症の流行当初より、官公庁からは一般企業におけるテレワーク移行が推奨されています。
ご自宅などでテレワークをされている男性・女性も多いと思われます。
そのような状況ですと、ふたりとも自宅にいるので時間の余裕ができ、パートナーと性交のタイミングがとりやすくなることがあります。
タイミングを取るためにも、パートナーとのコミュニケーションを増やすようにしてみましょう。
医療機関が受診しづらくなる!?
妊活に関連する医療機関といえば、婦人科や産婦人科、妊活クリニックなどが主です。
本記事の執筆時点で、新型コロナ感染症の影響で産婦人科などの医療機関が医療崩壊をおこした、という記事やニュースは見受けられません。
ただし、不妊治療のクリニックなどでは、体外受精の説明会などを中止またはオンラインでの動画説明会に変更していることがあります。詳しくは、おかかりの医療機関のサイトなどでご確認ください。
妊活のためにランニングなどの運動のための外出はできなくなる?
いいえ、できます。
2020年4月6日現在の内閣官房のWEBサイトによると、「新型インフルエンザ等緊急事態宣言」が出されて、なおかつ、都道府県知事により外出自粛要請がなされた場合であっても、以下のような生活の維持に必要な外出は可能とされています。
- 医療機関への通院
- 生活必需品の買い物
- 必要不可欠な職場への出勤
- 健康維持のための散歩やジョギングなど
妊婦への新型コロナの影響
まず、妊婦さんがもっとも心配される、妊婦から胎児への感染は執筆時点で症例として確認できていません。
次に、妊婦の行動にどのような影響があるかですが、新型コロナに感染すると妊娠や出産の行動に影響があります。
先ほどの日本産婦人科感染症学会から出された「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について 妊娠中ならびに妊娠を希望される方へ」によると、新型コロナ感染の可能性のある時は以下のように、行動自粛や事前通達が記載されています。
- 新型コロナ感染の可能性のある時は妊婦健診受診を控える
- 新型コロナ感染の可能性があり、自宅で様子を見ていた場合に産科的症状(不正出血やお腹の痛み、破水感など)のある場合は、かかりつけの産婦人科で対応できないことがあるので、帰国者・接触者相談センターに相談する
- 妊娠末期(分娩前)に新型コロナに感染した妊婦さんは,妊指定医療機関で分娩を行うことになる。
- 新生児とお母さん双方のウイルス陰性が確認されるまで面会できない。また授乳もできない。
(編集部注:ただし、妊婦以外にも該当する、いわゆる3「密」などは除いています)
いずれにしても、新型コロナ感染の可能性があって不安なときは、自分で勝手に判断することなく、主治医か帰国者・接触者相談センターに電話でご相談されることをお勧めします。
また、厚生労働省の「妊婦の方々などに向けた新型コロナウイルス感染症対策」には、以下のような記載があります。過度な心配をしすぎないように、とのお知らせがされています。
現時点では、妊娠後期に新型コロナに感染したとしても、経過や重症度は妊娠していない方と変わらないとされています。
胎児のウイルス感染症例が海外で報告されていますが、胎児の異常や死産、流産を起こしやすいという報告はありません。したがって、妊娠中でも過度な心配はいりません。
なお、いずれの資料にも一般的に妊婦が肺炎に罹患すると重症化する可能性がある、と記載されています。十分に注意しましょう。
2020年6月末現在のコロナ治療薬は妊婦に使えない
日本産科婦人科学会などが2020年6月に出した「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応(第四版) 」では、妊婦の治療については以下のようなことが書かれています。
- 特異的な治療薬やワクチンはない
- レムデシビル(米ギリアド・
サイエンシズ)やファビピラビル(富士フイルム富山化学「アビガン」)の治験は進行中だが、いずれも妊婦への投与制限がある - 妊婦の治療法は、全身状態や妊娠週数を勘案すること
その他にも、産科的な管理方法も提案されています。妊婦さん、あるいはパートナーの方は一目を通されてはいかがでしょうか。(産科的管理は9ページ~10ページ)
そもそも妊活は感染症との戦いでもある
妊活は感染症予防が重要であり、この新型コロナ感染症に限ったことではありません。風しんや麻しん(ましん)、水ぼうそうやおたふくかぜなどは予防接種が可能なので、妊活中の方は聞いたことがあると思います。
とくに妊娠中の場合は、パートナーとして男性も風邪やインフルエンザなどに感染したいようにしたいもの。
- 咳エチケットの徹底
- 手洗い・うがいの徹底
普段の生活から、感染症対策として継続して取り組みましょう。
妊婦におすすめの新型コロナ対策
うえで紹介した日本産婦人科感染症学会のリリースには、外出後および食事前などこまめに、流水と石鹸で手洗いをすることにくわえて、「20 秒以上,手首まで」洗うことと、新型コロナウイルスにはアルコールなどの消毒薬が有効。と書かれています。
現在、アルコール消毒液は手に入りにくい状況であると考えられますが、妊婦の方がいらっしゃる家庭には優先的に購入・入手できるなど、政府や自治体が努力してほしいですよね。
妊活には新型コロナの影響あり!3つの「密」を避けて妊活を!
ここまで見てきたように、新型コロナ感染症の流行により、仕事や生活に大きく影響が出ている方々も多く、妊活への影響は避けきれないというのが実情です。
東京都や厚生労働省からの要請にある通り、「3つの密」が重なる空間・時間を避ける、というのが重要な対策とされていますので、この対策は確実に実行しましょう。
- 密閉空間
- 密集場所
- 密接場面
出典:東京都「 若者向け新型コロナウイルス感染症に関するメッセージ(3月26日)」
妊活経験や子育て経験がある方々には、インフルエンザ対策と同様にしておけば問題ない、と思われる方は多いといいます。
ただし現状は、新型コロナ感染症(COVID-19)の検査(PCR法が主流)を受けられる医療機関は限定的で、なおかつインフルエンザのような即座に陽性や陰性の結果を判定できるものではありません。
したがって、「り患しているかもしれない」という不安がつきまといやすい病気といえます。だからこそ、感染してしまう可能性が高い場所への移動や、人との接触は避けたほうがよいかもしれません。
今後も、この記事でご紹介したサイトや以下のサイトで、新型コロナ感染症対策の情報を収集し、可能な範囲内での妊活に取り組んでいきましょう。
<新型コロナ感染症に関する情報サイト>