「なかなか妊娠できない」と悩んでいる方の中には、睡眠時間が不規則だったり、睡眠不足を感じていたりする方も多いのではないでしょうか。実は、睡眠と妊娠率には深い関係があることが、最新の研究で明らかになっています。
2015年から2017年にかけてアメリカで実施された研究では、入眠時間や睡眠時間のばらつきが大きい女性ほど、妊娠までの期間が長くなることが判明しました。具体的には、入眠時間のばらつきが1.8時間以上の女性は妊娠しやすさが40%低下、睡眠時間のばらつきが2.3時間以上の女性は42%低下するという結果が報告されています。
つまり、睡眠時間の長さだけでなく、毎日同じリズムで寝起きすることが妊娠しやすい体づくりには欠かせないのです。この記事では、睡眠と妊娠率の関係、理想的な睡眠時間と質、そして規則正しい睡眠リズムを整える具体的な方法について詳しく解説します。
睡眠が妊娠率に影響する理由
なぜ睡眠が妊活にとって重要なのでしょうか。睡眠と生殖機能の関係を科学的に見ていきましょう。
ホルモン分泌と睡眠の深い関係
睡眠中には、妊娠に重要なさまざまなホルモンが分泌されます。女性ホルモンであるエストロゲンは卵子の成長を促し、プロゲステロンは子宮内膜を着床に適した状態に整えます。これらのホルモンの分泌は、視床下部-下垂体-卵巣という系統で制御されており、睡眠不足によって日内リズムが乱れると、この系統全体に悪影響が及びます。睡眠時間が足りないと排卵に欠かせない卵胞刺激ホルモンの量が減少することも報告されています。
メラトニンが卵子を守る
睡眠時には睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンが分泌され、自然な眠りを誘います。このメラトニンには強力な抗酸化作用があり、卵子を酸化ストレス(老化)から守ってくれる働きがあります。メラトニンがきちんと分泌されれば卵子の質の改善につながり、体外受精において成熟率、受精率、胚の質の改善が証明された論文も数多く発表されています。メラトニンはビタミンEの約2倍の抗酸化作用を持つとされ、卵巣を保護する重要な役割を果たしています。
体内時計の乱れがホルモンバランスを崩す
人間の体内時計は24時間よりも少し長く設定されており、毎日の睡眠と覚醒のリズムによって24時間に調整されています。入眠時間や起床時間が不規則になると、この体内時計が乱れ、それを司る視床下部-下垂体-副腎系統に作用します。同じ系統内で制御されている性ホルモンのバランスにも悪影響が出るため、排卵障害や生理不順の原因となります。体内時計のリズムは、自律神経、体温調節、ホルモン分泌、免疫など、すべての生命維持機能を統括する重要な働きを持っています。
睡眠不足がストレスホルモンを増やす
睡眠時間が短いと、必要なホルモンが分泌されないだけでなく、不要なストレスホルモンの増加を招きます。ストレスホルモンであるコルチゾールが長期間高止まりすると、気分調節や認知機能に悪影響を及ぼし、妊活へのモチベーション低下にもつながります。また、睡眠不足のストレスにより炎症反応が起こることも、不妊の一因として考えられています。
研究が示す睡眠リズムと妊娠率の関係
科学的なデータに基づいて、睡眠リズムが妊娠率にどのように影響するかを詳しく見ていきましょう。
入眠時間のばらつきと妊娠率
2015年2月から2017年11月まで実施されたアメリカの研究では、妊娠を希望する女性にアクチグラフウォッチ(腕時計型の加速度センサー)を2週間装着してもらい、入眠時間、起床時間、睡眠時間とそれらの変動を記録しました。被験者183人のうち82人が追跡期間中の中央値2.8ヶ月で妊娠しましたが、重要な発見がありました。入眠時間のばらつきが1.8時間未満の女性に比べて、1.8時間以上の女性は妊娠しやすさが40%低下したのです。
睡眠時間のばらつきの影響
同じ研究で、睡眠時間のばらつきも妊娠率に大きく影響することがわかりました。睡眠時間のばらつきが2.3時間未満の女性に比べて、2.3時間以上の女性は妊娠しやすさが42%低下しました。つまり、ある日は5時間しか寝ず、別の日は9時間寝るといった不規則な睡眠パターンは、妊娠までの期間を長引かせる要因となります。
平均的な睡眠時間よりもリズムが重要
興味深いことに、入眠時間や起床時間、睡眠時間の平均については、統計的に意味のある差は見られませんでした。これは、「何時間寝たか」という総量よりも、「毎日同じリズムで眠れているか」という規則性の方が、妊娠しやすさに大きく影響することを示しています。体内時計の2つの指標である入眠時間と睡眠時間の日々のばらつきが大きいほど、妊娠までにかかる期間が長くなるのです。
睡眠障害と妊孕性の関係
別の大規模研究では、睡眠障害を持つ女性は中等度の妊孕性(妊娠しやすさ)の低下が認められました。睡眠障害が半分以上の夜に認められる場合には、有意差を持って妊孕性を低下させるという結果が示されています。寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める、眠りが浅いといった睡眠障害は、単なる体調不良ではなく、妊娠率に直接影響する要因として認識すべきです。
妊活に理想的な睡眠時間
睡眠時間と妊娠率の関係について、複数の研究結果をもとに解説します。
7〜8時間がベストな睡眠時間
複数の研究結果から、妊活中の女性にとって理想的な睡眠時間は7〜8時間であることがわかっています。アメリカで行われた大規模な調査によると、1日の睡眠時間が8時間の女性を基準(1.00)とした場合の妊娠率は、6時間未満で0.89、6時間で0.95、7時間で0.99、9時間以上で0.96となりました。8時間睡眠の女性と比べると、睡眠時間が減るほど妊娠確率も下がっていくことがわかります。
睡眠不足も寝過ぎも妊娠率を下げる
6時間未満の睡眠不足は明らかに妊娠率を低下させますが、興味深いことに9時間以上と長すぎても妊娠率が下がることが明らかになりました。睡眠時間は短すぎず長すぎない7〜8時間がベストと言えるでしょう。ハーバード大学の研究でも7〜8時間が理想的とされており、この時間帯が最も妊娠しやすい体の状態を保つことができます。
男性の睡眠時間も重要
男性の場合も、睡眠時間が8時間の人に比べて6時間未満の人は妊娠に至る確率が0.62倍となり、夜勤勤務や不規則勤務の人はそうでない人と比較して妊娠力は0.6倍となることが報告されています。睡眠不足は精子の質の低下や男性ホルモンの分泌量減少を招くことがあり、男性ホルモンは通常、睡眠中に最も多く分泌されます。妊活は夫婦二人で取り組むものであり、男性も適切な睡眠時間を確保することが重要です。
体外受精の成績も睡眠で変わる
体外受精治療を受けている方にとっても、睡眠は重要です。ある研究データによると、睡眠の改善により睡眠時間が1時間延びると、採卵個数が平均で1.5個増加したという結果が報告されています。睡眠時間が6時間未満の方では、自然妊娠だけでなく体外受精の成功率も低下する恐れがあります。治療中の緊張やプレッシャーで睡眠の質が悪くなることがよくありますが、意識的に睡眠を改善することで治療成績の向上が期待できます。
睡眠の質を高める方法
睡眠時間を確保するだけでなく、質の高い睡眠を得ることも妊活には欠かせません。ここでは、睡眠の質を向上させる具体的な方法をご紹介します。
決まった時間に寝起きする習慣をつける
最も重要なのは、毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きる習慣をつけることです。平日と休日で起床時刻の差が大きいと、体内時計が乱れて睡眠の質が低下します。理想的には、平日と休日の起床時刻の差は2時間以内に抑えましょう。週末に寝だめをしても、失われた睡眠は取り戻せないため、平日から規則正しい睡眠リズムを維持することが大切です。
朝日を浴びて体内時計をリセットする
起床後はすぐにカーテンを開けて、太陽の光を浴びましょう。太陽光を浴びることで体内時計がリセットされ、約14〜16時間後にメラトニンの分泌が始まります。曇り空でも自然光であれば効果があります。起床後45分以上の散歩ができれば理想的ですが、難しい場合は窓辺で数分間日光を浴びるだけでも効果があります。朝の光は、夜の良質な睡眠につながる重要な習慣です。
就寝前の習慣を整える
就寝の1時間前からは、脳が興奮しないようリラックスタイムを設けましょう。スマートフォンやパソコンから発せられるブルーライトは、メラトニンの分泌を抑制して入眠を妨げます。「夜○時以降はスマホを見ない」「寝室にはスマホを持ち込まない」というルールを決めて実行すると、睡眠の質が改善されることがあります。代わりに、軽いストレッチや読書、アロマテラピーなど、心身をリラックスさせる活動を取り入れましょう。
入浴で体温調節を利用する
就寝の1〜2時間前に、38〜40℃程度のぬるめのお湯に15分ほど浸かりましょう。入浴後、体温が下がっていく過程で眠気が訪れやすくなります。就寝直前に42℃以上の高温で入浴すると、体温が上がりすぎて心身が覚醒してしまい、入眠が妨げられるので注意が必要です。シャワーだけで済ませず、湯船にしっかり浸かる習慣をつけることで、睡眠の質が向上します。
寝室環境を整える
寝室の温度は18〜20℃程度、湿度は50〜60%が理想的です。暑すぎても寒すぎても眠りが浅くなるため、季節に応じて適切に調整しましょう。遮光カーテンで外の光を遮り、静かな環境を作ることも大切です。寝具は体に合ったものを選び、定期的に洗濯して清潔に保ちましょう。マットレスや枕が体に合っていないと、睡眠の質が低下するだけでなく、腰痛や肩こりの原因にもなります。
カフェインとアルコールの摂取タイミング
カフェインは覚醒作用があるため、夕方以降の摂取は避けましょう。カフェインの効果は4〜6時間持続するため、午後3時以降はカフェインを含む飲み物を控えることをおすすめします。また、アルコールは寝つきを良くする効果がありますが、睡眠の質を低下させ、夜中に目が覚めやすくなります。妊活中は飲酒自体を控えることが望ましいですが、飲む場合は就寝の3時間前までにしましょう。
生活リズムを整えるための具体的な方法
規則正しい睡眠リズムを維持するために、日常生活で取り入れたい習慣をご紹介します。
朝食を必ず食べる
朝食を食べることは、体内時計のリセット効果を高めます。起床後2時間以内に、バランスよくしっかりと食べることが理想的です。朝食を抜くと体温が上がりきれず、基礎代謝量が減り、一日の活動に悪影響を及ぼします。タンパク質を含む食事を摂ることで、セロトニンの材料となるトリプトファンを補給でき、夜のメラトニン分泌にもつながります。
適度な運動を取り入れる
運動は睡眠の質の改善に非常に効果的です。運動をするとセロトニンという精神を安定させるホルモンの分泌が促進され、このセロトニンは夜になるとメラトニンに変化します。また、運動によって体が適度に疲れ、入眠しやすくなります。ウォーキングなど軽く息が上がるくらいの早さで20分ほど歩く時間を作るのがおすすめです。ただし、就寝直前の激しい運動は逆効果なので、夕方までに済ませましょう。
昼寝は短時間に抑える
日中に眠気を感じる場合、短時間の昼寝は効果的です。ただし、夕方以降に居眠りや仮眠をとると、夜間の睡眠に影響します。昼寝をする場合は、午後1〜3時の間で30分以内にとどめましょう。長時間の昼寝は体内時計を乱し、夜の入眠を妨げます。どうしても眠い場合は、横にならず座った姿勢で軽く目を閉じる程度にしましょう。
食事時間を規則正しくする
食事時間がバラバラで不規則だと、体内時計が乱れやすくなります。朝食、昼食、夕食をできるだけ毎日同じ時間に摂る習慣をつけましょう。特に朝食の時間を一定にすることで、体内時計のリズムが整いやすくなります。夕食は就寝の3時間前までに済ませることが理想的で、遅い時間の食事は消化活動によって睡眠の質が低下します。
ストレス管理を意識する
ストレスがたまると交感神経が優位な状態が続き、入眠が困難になります。ヨガ、瞑想、深呼吸、アロマテラピーなど、自分に合ったリラックス方法を見つけて実践しましょう。妊活中は「いつ妊娠できるか」という不安やプレッシャーからストレスを感じやすいため、パートナーとコミュニケーションを取ったり、趣味の時間を持ったりして、ストレスを溜め込まないことが大切です。
睡眠障害がある場合の対処法
寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める、眠りが浅いといった睡眠障害がある場合の対処法をご紹介します。
寝られない時は無理に寝ようとしない
「寝なければならない」と思いすぎると、かえってストレスになり眠れなくなります。どうしても寝られない時は、一度寝るのを諦めて、温かいものを飲んでぼーっとしてみましょう。リラックスした状態になると、自然と眠気が訪れやすくなります。ベッドの中で30分以上眠れない場合は、いったん起きて別の部屋で静かに過ごし、眠気を感じてから再びベッドに入るのも効果的です。
寝室を睡眠専用の空間にする
ベッドや寝室は睡眠のためだけに使い、スマートフォンの使用や仕事、テレビ視聴などは別の場所で行いましょう。寝室を睡眠専用の空間にすることで、脳が「ここは眠る場所」と認識し、入眠しやすくなります。読書も寝室ではなくリビングで行い、眠くなったら寝室に移動するという習慣をつけると効果的です。
睡眠日誌をつけてパターンを把握する
いつ寝て、いつ起きたか、睡眠の質はどうだったかを記録する睡眠日誌をつけてみましょう。自分の睡眠パターンを客観的に把握することで、問題点が見えてきます。また、月経周期と睡眠の関係を記録することで、睡眠変化が起こりやすい時期を把握することもできます。日頃の睡眠環境や生活習慣を整え、嗜好品の取り方を見直すことで、月経周期に伴う睡眠の問題を和らげることが期待できます。
専門家に相談する
睡眠障害が続く場合や、睡眠薬に頼らないと眠れない状態が続く場合は、早めに医師に相談しましょう。慢性不眠は肥満や心血管疾患を引き起こし、妊娠力にも間接的に悪影響を及ぼします。睡眠外来や心療内科などの専門医に相談することで、適切な治療やアドバイスを受けられます。また、強いストレスや肩こりがある場合、自律神経が乱れやすくなり睡眠の質が低下するため、鍼灸やマッサージなどの治療も選択肢の一つです。
パートナーと一緒に睡眠習慣を改善する
妊活は夫婦二人で取り組むものです。睡眠習慣の改善も、パートナーと一緒に行うことで効果が高まります。
同じ時間に寝起きする
可能であれば、夫婦で同じ時間に寝て、同じ時間に起きる習慣をつけましょう。生活リズムが揃うことで、お互いの睡眠を妨げることなく、質の高い睡眠を得られます。また、一緒に朝食を食べたり、夕食後にリラックスタイムを過ごしたりすることで、コミュニケーションの時間も増え、妊活へのモチベーションも高まります。
寝室環境を二人で整える
寝室の温度、湿度、明るさ、静かさなど、二人にとって快適な環境を一緒に作りましょう。寝具の好みが異なる場合は、それぞれに合ったものを選んでも構いません。お互いに快適に眠れる環境を話し合って整えることで、睡眠の質が向上します。
お互いの睡眠を尊重する
男性の中には、仕事の都合で就寝時間が遅くなる方もいるでしょう。無理に同じ時間に寝る必要はありませんが、相手の睡眠を妨げないよう配慮することが大切です。後から寝る場合は静かに入室し、明かりや音に気をつけましょう。お互いの睡眠を尊重することで、夫婦関係も良好に保てます。
一緒に運動や入浴を楽しむ
休日に一緒にウォーキングをしたり、夕食後に散歩に出かけたりすることで、二人とも適度な運動ができ、睡眠の質が向上します。また、時間が合えば一緒に入浴して、リラックスした時間を過ごすのも良いでしょう。妊活のための習慣というより、二人の時間を楽しむという気持ちで取り組むことで、無理なく続けられます。
まとめ
妊活において、睡眠は栄養や運動と同じくらい重要な要素です。最新の研究では、入眠時間や睡眠時間のばらつきが大きい女性ほど、妊娠までの期間が長くなることが明らかになっています。具体的には、入眠時間のばらつきが1.8時間以上の女性は妊娠しやすさが40%低下、睡眠時間のばらつきが2.3時間以上の女性は42%低下します。
理想的な睡眠時間は7〜8時間で、これより短くても長くても妊娠率が低下する傾向があります。しかし、睡眠時間の長さよりも重要なのは、毎日同じリズムで寝起きすることです。体内時計の乱れはホルモンバランスに悪影響を及ぼし、排卵障害や生理不順の原因となります。
睡眠の質を高めるには、決まった時間に寝起きする、朝日を浴びる、就寝前のスマートフォン使用を控える、ぬるめのお風呂に入る、寝室環境を整えるなどの習慣が効果的です。また、朝食を必ず食べる、適度な運動をする、食事時間を規則正しくするなど、日中の生活習慣も睡眠の質に大きく影響します。
睡眠障害がある場合は、無理に寝ようとせずリラックスすること、寝室を睡眠専用の空間にすること、睡眠日誌をつけてパターンを把握することが有効です。改善が見られない場合は、早めに専門家に相談しましょう。
妊活は夫婦二人で取り組むものです。パートナーと一緒に睡眠習慣を改善することで、お互いの妊孕性が高まるだけでなく、コミュニケーションも深まります。規則正しい睡眠リズムを整えることは、妊娠しやすい体づくりの基本であり、妊娠後の体力づくりや産後の回復にも役立ちます。
何か不安なことがあれば、遠慮なく医師や専門家に相談してください。質の高い睡眠を通じて、心身ともに健やかな妊活ライフを送りましょう。あなたの妊活が実り豊かなものになるよう、フューチャーファミリーは応援しています。