妊活は男女ふたりで取り組むべき活動で、女性だけの活動ではありません。しかし、古い考え方が定着していて、まだまだ妊活が女性だけの取り組みだと思っている男性の割合が多いのが実情です。
男女で協力しながら妊活に取り組むためには、男性も正しい知識を持つ必要があるのです。
男性が妊活で知らない4つのこと!女性との意識差
男性は女性よりも妊活に対する意識が低く、避妊せずにセックスをしていれば子どもを自然に授かると考えている人が多いといわれています。
まずはじめに申し上げておくと、避妊せずにセックスをして子どもを授かれるのは一部の人だけです。この事実をしっかり認識してください。
また、実際に子どもを授かった男性、または妊活中の男性への調査によると、妊活に対して「もっと早くから努力すればよかった」「必要な知識を持っておくべきだった」と後悔する男性も多いようです。
一度しかない人生です。ああすればよかった・・・と後悔しないように、男性が妊活する上で知っておきたい「4つのデータ」を紹介します。実は、知識の差よりも意識の差が大きいのです。
【データ1】3組に1組は子どもができるまでに”1年以上”かかる?
避妊をせずにセックスすれば、すぐにでも妊娠をするものだと考えている男性は多いですが、実際はそうでないケースも多いと言われています。
とある調査結果によると、妊娠を目的として避妊をやめてセックスしても、妊娠するまでに1年以上かかったというカップルの割合は30%程度と言われています。
つまり、妊娠を希望しているカップルの3組みに1組みが妊娠までに1年以上の期間を費やしているのです。
また、カップルで話し合い、この時期までに子どもが欲しいと定めた期間中に妊娠できなかったカップルの割合は40%を超えると言われています。
さらに、想定した期間よりも2年以上経過してやっと子どもを授かったというカップルは15%以上いると言われています。
このように、セックスすれば直ちに妊娠するという考えは、妊活をはじめるにあたっては少し隅に置いておきましょう。
【データ2】男性が思うよりも女性は早いうちから妊活に取り組んでいる?
妊活を円滑に進めるためには、お互いの心身の状態・状況をパートナーによく知ってもらうことが重要です。
実際、妊活に対して男性と女性が話し合い、同時期に取り組み始めたという意見は50%を超えると言われています。
しかし、積極的に妊活を始めた時期は、女性の方がより早く、男性が意識的に妊活に取り組み始めたとき、すでに女性の30%以上が妊活に取り組んでいるようです。
つまり男性が妊活を意識的かつ具体的におこなっていると思ったときには、すでに女性は妊活に取り組んでいる最中なのです。
このような状況で、もし男性側に不妊理由があった場合、もっと早くから不妊理由を探るための検査や通院・治療をおこなっていれば…。
男性だけではなくふたりで後悔することにつながりかねません。貴重な時間を無駄にしないためにも、夫婦揃って早いうちから妊活に取り組む姿勢が重要といえます。
【データ3】妊活を振り返って後悔している男性は60%以上?
現在、妊活をしている男性、また妊活を経験した男性に、妊活について後悔があるか聞いてみると、60%以上の男性が妊活に何かしらの後悔を持っていると回答すると言われています。
具体的には、次のようなことを後悔している場合が多いようです。
「もっと早くからパートナーと共に妊活すべきだった」
「自分が積極的になるべきだった」
「自分ができることからどんどんはじめておけばよかった」
さらに「健康的な生活をする」や、「ストレスをためない」などのほかに、精子を調べる精液検査キットなどを早くから使っておけばよかったという声もあがっているようです。
【データ4】男性不妊症で子どもを授かれない場合が20%以上ある?
避妊をやめてセックスをはじめ1年以上経過しても妊娠しない場合は不妊症とされています。
このうち男性側に原因がある場合は男性不妊症となるわけですが、WHOなどの調査によると男性のみに不妊原因があるカップルはなんと全体の24%にものぼると言われています。
ごく普通のカップルでも15%が不妊症といわれている中で、男性にのみ原因がある場合が24%という数字は不妊に関心が薄い男性にとっては驚きの数字でしょう。
早い段階から男性が「自分に原因があるかもしれない」と考えて検査などを行い、すぐにでも妊活や不妊治療を開始することが、後悔しない妊活につながります。
知ってる?男性不妊症の原因とは
これまでご紹介してきたように、男性になんらかの不妊の原因があることは少なくありません。
そのため、妊活を本格的に始めるのなら、その前に自分の性機能が正常かどうかを確認することが重要と言えます。
男性不妊症の原因!あなたの性機能は大丈夫?
男性不妊症の原因は主に、造精機能障害、精路通過障害、性機能障害の3つです。このうち最も多いのが造精機能障害で、男性不妊症の原因のうち80%を超えると言われています。
残りの原因である精路通過障害は4%弱、性機能障害が14%弱程度のようです。
分類 | 病状 | 病態/原因疾患 |
---|---|---|
軽度~中等度の精液性状低下 |
|
造精機能障害 |
高度の精液性状低下 |
|
造精機能障害、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症、停留精巣術後 |
無精子症 | 精液中に精子がまったく見られない | 閉塞性無精子症(精路通過障害)、クラインフェルター症候群ほか |
性機能障害 | 勃起障害、膣内射精障害など | 精神性、糖尿病など |
性機能障害とは
性機能障害は、若く健康な男女なのに性行為ができない、したくないという状態です。国内の婚姻カップルの中で、すでに40%以上が「セックスレス」といわれており、性機能障害は男性不妊症にも深く関係している問題として注目されています。
精子に問題があるケースも
女性は年齢が高くなるにつれ妊娠しにくくなると言われていますが、男性も年齢が高くなるにつれ「精子」に問題が見つかるケースが多くなると言われています。
晩婚化が進み以前よりも高い年齢で結婚が決まり、ブライダルチェック(結婚する前に自分たちの体が妊娠できる体であるかをチェックする検査)を受ける男性も多くなっています。
ブライダルチェックを受けた男性の8%程度の人に「精子数の減少」が見られ、1〜2%程度の人に「無精子症」の男性がいると言われています。
女性の不妊の原因の概略を知ろう
女性に考えられる不妊症の原因には、以下のようなものがあります。
女性の不妊因子 | 病状 | 病態/原因疾患 |
---|---|---|
排卵因子 | 排卵障害 | 高プロラクチン血症、多嚢胞性卵巣症候群など |
卵管因子 | 閉塞、狭窄、癒着 | 性器クラミジア感染症など |
子宮因子 | 子宮内膜への着床障害、精子の卵子到達妨害 | 子宮筋腫、子宮内膜ポリープ、先天奇形など |
頸管因子 | 精子の子宮内到達を妨害 | 子宮頸管の炎症、粘液分泌異常など |
免疫因子 | 抗精子抗体の生成 | 免疫異常 |
このほかにも明らかな不妊の原因がみつからない場合もあります。詳しくは別の記事をご覧ください。

妊活前にぜひ一度!男性不妊症検査の流れを紹介
男性不妊症かどうかを判断するひとつの目安として、自分の「精子量が少なくなっていないか」という指標があります。
普段の量よりも少ないなと感じることが多くなった男性は、いちど不妊症の検査をおこなうことをおすすめします。
検査方法は大きくわけて、自分でおこなう方法と病院で受ける方法の2種類があります。
自宅でアプリや検査キットでおこなう男性不妊症検査
近年は、不妊症となる男性が多いことから、自分で精子の状態をチェックできるアプリとキットが販売されています。これらを用いることで、自宅に居ながら精子の濃度や運動率などを測定できるのです。
このようなアプリやキットを用いた検査から自身の精子の状態を数値化して把握することができ、WHOの下限基準値と比較できることから、男性不妊症の治療が必要かを把握するために有効です。
精液検査項目 | WHO 2010の基準値 |
---|---|
精子量 | 1.5mL 以上 |
総精子数 | 3900万/全精液量 以上 |
精子濃度 | 1500万/mL 以上 |
運動率 | 40% 以上 |
前進運動率 | 32% 以上 |
生存率 | 58% 以上 |
正常形態率 | ④% 以上 |
病院で受ける男性不妊症検査の流れ
病院での不妊症検査は、問診から始まり身体測定などを経て、そのあと精液診察に入ります。4日間程度の禁欲後に射精し、採取した精子を30分程度置いて液化させ、精子の状態を確認します。この診察によって精子の濃度や奇形の率などがわかります。
さらに、精子の数が非常に少ない場合や無精子症の場合には、染色体や遺伝子の検査も行われることがあります。
今日からできる男性妊活の知識!不妊症を防ぎ精子を活発に!
妊活のスタート地点に立つ男性にとって、不妊症検査からまずはじめるというのは、なかなか高いハードルかもしれません。
またこの記事の前半でもお伝えしたように、妊活スタート地点での男性と女性の妊活や妊娠に対する知識量の差があるというのは、どうしようもない事実として存在します。
目標は同じ!パートナーから妊活知識を教えてもらう
まずは、この知識量の差を受け入れて、妊娠の知識を蓄えるということからはじめることをお勧めします。当サイトでも、継続して男性に必要な妊活知識をお伝えしています。

ただし、知識はすぐに身につくものではありませんので、パートナーに妊活知識を教えてもらうことをおすすめします。
教えてもらうときのコツは、へんに取り繕ったり、学校教育のせいにしたり、知ったかぶりをしないこと。パートナーとの関係性にもよりますが、重要なのは、正しく目線を合わせることなのです。
生活習慣や食生活の改善は妊活のキホン
男性不妊症の予防や改善には、特に「生活習慣の改善」や「食生活の改善」が重要と考えられています。
高血圧や糖尿、高脂血症など、生活習慣病は男性不妊の原因につながるとされているため、これらの基礎疾患に対する適切な治療を受けましょう。
くわえてバランスのいい食事と規則正しい生活を送ることが、生活習慣病を緩和し男性不妊症の予防や改善につながと言われています。
男性妊活の食事で摂取したい栄養素
ホルモンバランスを整え男性自身を強くするためには、牡蠣などの亜鉛が豊富に含まれている食べ物や、ビタミンC、Eといった抗酸化作用のあるビタミン類を積極的に摂取しましょう。
精巣の機能を適切に保つために注意したいこと
精巣の温度が高くなると精巣の機能は低下します。たとえば、「サウナ」は精巣機能に影響する可能性が高いです。
また、膝の上にノートパソコンなどをおいて作業すると精巣付近の温度が高くなり精巣機能が低下する可能性があるため、避けることをおすすめします。
ほかにも、精巣付近が常にリラックスし、締め付けのない涼しい環境でいることも重要。下着はブリーフタイプよりもトランクスタイプがおすすめです。
男性妊活には禁煙がおすすめ
男性は煙草を吸うことで、精子に影響のある活性酸素が体内に多くなり、それによってDNAの損傷が起こり、精子の数や精子の運動能力を低下させると言われています。
男性妊活中は適度な禁欲がいいって本当?
男性の妊活は禁欲することが大切と言われることがありますが、禁欲が一概に良いわけではないようです。
男性の体内での精子生存期間は3日程度と言われており、また禁欲によって非運動精子が多くなることから質のいい精子が少なくなる可能性があるため、過度な禁欲には注意が必要です。
男性向け発毛剤には男性機能を低下させる副作用があるものも
飲み薬の発毛剤も男性機能の低下という副作用があると言われています。
理由としては、飲み薬の発毛剤のなかにはフィナステリドと呼ばれる男性ホルモン抑制の働きを持つ成分が含まれている医薬品があるため。
この作用に関連して男性ホルモンが抑制されると精子を作る機能が低下する恐れがあるからです。
男性も妊活の知識をつけて、意識の差を埋めて、パートナーと共に2人で取り組む
男性不妊症が多くなっている現在、男性は自分も男性不妊症の可能性があると考えてみるのが重要です。妊活は知れば知るほど簡単ではありません。
だからこそ、妊活における負担をパートナーの女性ひとりに「背負わせる」ものではありません。「二人で一緒に」考え、妊活の知識を身に付け、二人三脚で取り組むのが理想です。
そうするからこそ、妊活がうまくいったときの喜びを分かち合えるのではないでしょうか。むしろ、妊活を成功に近づけるためには、男性が主体性を持って活動することが求められます。
いっぽうで妊活はデリケートでプライベートな問題がつきまといます。もちろん専門家の力が必要なこともありますので、迷ったらまずは医師に相談してみることをおすすめします。