2人目を望んで妊活をしているものの、なかなか授かることができない状態は「2人目不妊」と呼ばれています。
ここでは、2人目不妊の定義や現状、そして2人目不妊を克服するための方法を考えます。
2人目不妊とは
どれくらいの期間妊活を続けていて妊娠しなければ、2人目不妊かという明確な定義はありません。
一般的には、通常(1人目)の不妊の定義と同様に、2人目を望んで避妊をせずに性交を続けても1年間妊娠することがない状態を2人目不妊と呼んでいます。
なお、医学的には、一度も妊娠したことがない不妊を「原発性不妊」といい、出産に関係なく1度でも妊娠したことはある(自然流産や子宮外妊娠などの異常妊娠含む)が、その後妊娠できない不妊を「続発性不妊」と呼びます。
増える2人目不妊
第15回出生動向基本調査によると、予定子ども数が理想子ども数を下回る夫婦にその理由を聞いたところ、経済的な理由のつぎに、身体的理由をあげる女性が多くいました。
予定子ども数が理想を下回る夫婦 | ||||
理想1人以上 予定0人 (77夫婦) |
理想2人以上 予定1人 (491夫婦) |
理想3人以上 予定2人以上 (685夫婦) |
||
経済的理由 | 子育てや教育に お金がかかりすぎるから |
15.6% | 43.8% | 69.8% |
自分の仕事(勤めや家業)に 差し支えるから |
6.5% | 11.8% | 18.7% | |
家が狭いから | 1.3% | 6.1% | 16.1% | |
年齢・身体的 理由 |
高年齢で生むのはいやだから | 39.0% | 42.4% | 38.1% |
欲しいけれどもできないから | 74.0% | 34.8% | 9.8% | |
健康上の理由から | 24.7% | 17.5% | 14.7% | |
育児負担 | これ以上、育児の心理的、肉体的負担に耐えられないから | 9.1% | 14.1% | 21.0% |
夫に関する理由 | 夫の家事・育児への協力が得られないから | 2.6% | 11.6% | 1.5% |
一番末の子が夫の定年退職までに成人してほしいから | 2.6% | 6.5% | 8.3% | |
夫が望まないから | 3.9% | 9.4% | 7.7% | |
その他 | 子供がのびのび育つ社会環境ではないから | 6.5% | 5.7% | 6.1% |
自分や夫婦の生活を大切にしたいから | 9.1% | 4.9% | 6.3% |
注目すべきは、理想2人以上予定1人の「2人目が授かれない夫婦」において「欲しいけれどもできないから」という理由が34.8%と、じつに2人目の妊活に取り組んでいる3組に1組が授かれていない、ということがわかります。
また下のデータの2010年以降に着目してみましょう。
結婚している期間が15年を超えても、子どもの数が2人を下回る夫婦の数が増えています。
これらのことから、2人目不妊が増えていると推測できます。
さらに、2人目の妊活に取り組もうとする年代の男性は働きざかりの場合も多く、ストレスや不規則な生活習慣になりがちです。
そのために、射精障害や勃起障害(ED)になることで、2人目不妊の原因になることがあります。
2人目不妊の原因
2人目不妊だといわれると「1人目はできたのに、なぜ?」となかなか原因がわからない人も多いはず。ここでは2人目不妊の考えられる原因をご紹介します。
もともと不妊
たまたま治療をしなくても1人目を妊娠・出産したが、2人目の妊活でなかなか子どもを授かることができず、じつはもともと不妊体質だったとわかるケースがあります。1人目が自然妊娠だった場合は、夫婦のどちらかが不妊体質だと考えもしないことも。
女性に考えられる不妊の原因
女性に考えられる不妊の原因には、以下のようなものがあります。1人目不妊と2人目不妊では特段原因の違いはありません。
女性の不妊因子 | 病状 | 病態/原因疾患 |
---|---|---|
排卵因子 | 排卵障害 | 高プロラクチン血症、多嚢胞性卵巣症候群など |
卵管因子 | 閉塞、狭窄、癒着 | 性器クラミジア感染症など |
子宮因子 | 子宮内膜への着床障害、精子の卵子到達妨害 | 子宮筋腫、子宮内膜ポリープ、先天奇形など |
頸管因子 | 精子の子宮内到達を妨害 | 子宮頸管の炎症、粘液分泌異常など |
免疫因子 | 抗精子抗体の生成 | 免疫異常 |
このほかにも明らかな不妊の原因がみつからない場合もあります。
男性に考えらえる不妊の原因
男性に考えられる不妊の原因も1人目のときと変わりません。ただし、1人目出産後にEDになるケースが多いようです。
分類 | 病状 | 病態/原因疾患 |
---|---|---|
軽度~中等度の精液性状低下 |
|
造精機能障害 |
高度の精液性状低下 |
|
造精機能障害、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症、停留精巣術後 |
無精子症 | 精液中に精子がまったく見られない | 閉塞性無精子症(精路通過障害)、クラインフェルター症候群ほか |
性機能障害 | 勃起障害、膣内射精障害など | 精神性、糖尿病など |
なお、1人目不妊と同じく、2人目不妊で男性が協力的でないことも多いようです。ましてや1人目ができたから、無根拠に自分はだいじょうぶと男性は思いがち。
だいじょうぶと思うからこそ、2人目妊活のはじめに精液検査をしたいものですね。
1人目出産による母体への影響
1人目の出産によって母体へのなんらかの影響があり、2人目不妊の原因になっていることがあります。
分娩のときの影響
たとえば、出産時の大量出血や子宮内に細菌が入り子宮内膜炎を起こしたり、卵管が詰まったりすると、妊娠しづらくなることがわかっています。
また、1人目が帝王切開での出産で、産後に帝王切開瘢痕(はんこん)症候群を起こしてしまうと、2人目不妊の原因になることがあります。
瘢痕(はんこん)とは傷が治った後に皮膚面にできる痕のことで、その痕が子宮に悪い影響をおこすことがあります。
母乳と授乳の影響
また授乳でもホルモンの分泌は変わり、女性の身体は妊娠しづらくなります。授乳を行うと、あらたに乳汁(母乳)をつくるためにプロラクチン(PRL)が分泌されます。
このプロラクチンは、授乳をおこなったり、乳頭への刺激が加わることで高い値を示し、排卵をストップさせます。
同時に黄体ホルモン(LH)や性腺刺激ホルモン(FSH)の分泌も抑制されるため、さらに妊娠しづらい体内環境になっていきます。
これらのほかにも、出産後のホルモンバランスの変化や、出産後に骨盤が正しく戻っていないためにおこる骨盤の歪みなども原因になることがあります。
2人目不妊の検査と治療方針
2人目不妊の検査と治療は、基本的に1人目の不妊検査や治療方法と変わりありません。それぞれの検査項目については、病院やクリニックで説明を受けるようにしましょう。
検査
2人目不妊の女性の検査は、血液検査によるホルモン分泌状況を調べるほかに、1人目出産の影響などで卵管が詰まっていたりするので卵管造影検査をおこなうことが多いようです。
いっぽう、2人目不妊の男性の検査は、精液検査からはじまるのがオーソドックスです。
治療方針
2人目不妊の治療は、原因がわかればその原因疾患を取り除きますが、原因がわからないことも多いためタイミング療法からステップアップ療法を行うことが多くあります。
ただし、2人目不妊ではタイミング法を行っても、夫婦がともに加齢していて自然妊娠しづらいことが予想されるため、早い時期から人工授精や体外受精を検討することも多くあります。
ツラい2人目不妊の現実
1人目の子どもがなかなかできない1人目不妊はつらいものですが、2人目不妊も周囲から気づかれないことが多く、1人目不妊とはまた別の辛さがあります。
2人目不妊と知らない周囲の人から、「2人目はいつ?まだ?」と聞かれる。
2人目が欲しいと妊活をしていたり、2人目不妊の治療をしているのに、周囲から「2人目はまだ?」とか「ひとりっこはかわいそう」などと心ない言葉をかけられることがあります。
言葉をかけたほうは、本当に気遣って言ってくれているのかもしれませんが、2人目の子どもを本当に欲しがって妊活を続けていて、それでも2人目をなかなか妊娠できず苦しんでいるのは、当の夫婦たちです。
また、2人目の妊活に取り組んで、なかなか妊娠できないことを伝えても、「子どもは、すでに1人いるからいいじゃない」とか「1人目ができたんだから、2人目もきっとできるよ!」とこちらの心情を理解してもらえないことも。
妊活ママの本音

あまり周囲の声には耳を傾けたくないな。雑音だし。
気長に取り組むしかないかな。
「1人目はできたから」「2人目もできて当然」という考えでジレンマに苦しむ
周囲から「1人目はできたから、2人目もできる」と本人が一番気にしていることを、遠慮なく言われることもあるのが2人目不妊のツライところです。
「1人目はできたのに、なぜ2人目を妊娠できないの?」と先入観に本人たちがとらわれすぎていて、ドツボにはまっていることも多いのです。
このようなジレンマは、1人目の妊活時にはなく、2人目不妊、3人目不妊の典型的な悩みだといえます。
妊活ママの本音

少しでも「あれ?おかしいな?」と思ったら、夫婦で一緒に不妊検査を受けたほうがいいかも。
2人目不妊は、通院するのが難しい
1人目不妊のときも、女性だけが通院回数が多かったり、夫婦揃って行くのにお互いの仕事の調整などが必要で、通院のタイミングを合わせることが難しかったりしたのではないかと思います。
2人目不妊には、これらにくわえて、1人目の子どもがいるために、通院の時間をつくるのがさらに難しくなります。
具体的には、不妊治療クリニックでは、子ども連れの通院ができないクリニックも多いため、保育園や託児施設などに預けたりしないと通院時間をつくることが難しいです。
たとえ子連れの通院がオッケーの医院であっても、医院のなかには不妊で子どもを授かろうと必死に治療している方が多いので、連れ込むのにはやはり抵抗感があり、現実的には難しいといえます。
妊活ママの本音

通いやすいクリニックはないかな・・・。
子どもを預けようにも、産後の育児休暇中だと預け先がむずかしい。
2人目不妊は、不妊治療をしながら育児と両立させるのが難しい
不妊治療もステージによっては、ママの身体への負担が増えていきます。
とくに胎盤胞移植後は安静にしなければならないのですが、1人目の子どもがまだ小さいと、抱っこをねだったり、あちこち移動するので、ママが安静にするのは至難の技です。
妊活ママの本音

こういうのは肉体的にも精神的にもツラいです。
2人目不妊ならではの対策とは
《対策1》2人目不妊治療を手厚くケアしている医療機関をみつける
2人目不妊の治療でもっとも難しいのが通院。1人目の子どもを連れて行くことができない医院も多く、かと言って通院時間に、祖父母など親戚に預けるということも難しい夫婦も多いはず。
じつは、不妊治療の医療機関には、2人目不妊専用のフロアを設けていたり、2人目不妊の方のみにしぼって診療時間をわけていたりするところがあります。
また、近隣の託児所と提携して、診察を受ける時間に1人目の子どもを預けることができたりする医院もありますよ。
《対策2》2人目以降不妊治療助成制度を活用する
埼玉県をはじめとして、地方自治体のなかには、2人目以降の出生のために不妊治療を受けた場合に助成金を支給する制度を設けているところがあります。
お住まいの地域が該当するかどうか一度調べておくことをおすすめします。
《対策3》男性・女性ともにBMI・体脂肪率の適正化を図る
1人目の育児をしながらの妊活が難しいのはうえで見てきたとおりですが、育児に集中するあまりママとパパの生活リズムが乱れて、2人目不妊の原因になっていることも。
夫婦どちらかのBMIや体脂肪率が極端に悪くなると、妊娠しづらくなることがわかっています
できるだけ規則的な食事の時間とバランスのよい食事をこころがけましょう。また定期的な運動をこころがけて適正なBMIと体脂肪率を目指すことが、2人目不妊を乗り越える近道になるでしょう。
《対策4》2人目不妊の対策をいつまで続けるか、いつ止めるかを決めておく
2人目不妊の治療や対策を続けるうえで、「2人目不妊治療の終わり」を決めておくことは重要です。
たとえば、不妊治療の費用が200万円を超えたら止める、35歳になったら止める、顕微授精が成功したら止める・・などなど、なるべく具体的に設定するのがポイントです。
終わりの見えない妊活を続けることは肉体的にも精神的にも負担が大きいもの。終わりを決めておくことで、それまでは妊活や不妊治療を続けるモチベーションを保ちやすくなりますよ。
2人目不妊は実は多い!焦らずに治療に取り組みましょう
2人目不妊は1人目の不妊とは違う難しさがあります。
1人目の子どものかわいさが増していくなかで、その成長を見つつ、2人目の不妊治療に取り組むのは、苦しさも大きいと思います。
しかし、2人目不妊に悩むのはあなたたちだけではありません。
2人目不妊に手厚く対応しているクリニックや周囲のサポートを適切に受けながら、2人目の妊活が成功するようにしていきましょう。