精子に問題があるときの不妊治療ってどうするの?

精子に問題があるときの不妊治療ってどうするの? 不妊治療に取り組む

妊活をしていて、パートナーと性交をして男性が射精しているものの、なかなか妊娠ができない場合は、男性の精子に問題がある可能性があります。

ここでは、男性不妊のなかでも精子にどのような問題があるかを詳しくご紹介します。

男性不妊では約8割が精子に問題がある

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平成27年度に厚生労働省がおこなった男性不妊にかかわる大規模調査*によると、男性不妊の約8割がなんらかの原因で精子に問題があることがわかっています。

男性不妊に該当する精子の問題は、以下のように分類されます。

分類 精子の問題 病態/原因疾患
軽度~中等度の精液性状低下
  • 精子の数の減少
  • 精子の運動率低下
  • 精子の奇形率の増加
造精機能障害
高度の精液性状低下
  • 精子の数が通常の1/100以下などと非常に少ない
  • 精子の運動率が通常の20-30%以下とかなり低い
造精機能障害、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症、停留精巣術後
無精子症 精液中に精子がまったく見られない 閉塞性無精子症、クラインフェルター症候群ほか

つまり、精液の中に、精子がどれだけいるか、元気はいいか、正常か、によって精子の問題は分類されます。もちろん、精子が少なかったり運動性が低下していたりすると、妊娠する確率は低くなります。

造精機能障害の原因の4割が不明、次いで3割が精索静脈瘤

通常よりも精子の数が少なくなったり、運動性が低下したりする病態を造精機能障害といいます。造精機能障害のおよそ4割が特発性(=原因不明)で、その次の多い原因が精索静脈瘤という陰嚢の静脈が拡張している状態です。

精索静脈瘤

精索静脈瘤とは、精巣や精索部に静脈瘤(静脈の拡張)が見られる状態のことです。静脈瘤は静脈が逆流し、拡張することでこぶのような状態になることが特徴です。逆流して血がうまく流れないことから、陰嚢の中の温度が上がり、精巣の機能不全が起きている状態です。

なお精索静脈瘤は全男性の約15%に見られますが、精索静脈瘤であればかならず静液に異常が見られるわけではありません。

乏精子症・精子無力症

乏精子症とは精液中の精子が少ないまたは濃度が低い状態、精子無力症は精液中の精子の運動性が低下している状態のことです。いずれも精液検査から調べることができます。

無精子症

無精子症は精液中に精子が見られない状態ですが、原因によって「閉塞性」と「非閉塞性」の無精子症にわかれます。

閉塞性無精子症は、精巣内で精子がつくられているものの、精子の通過路がなんらかの原因で閉じられている状態です。精路通過障害もほぼ同じ病状を呈します。

いっぽう、非閉塞性精子無力症は精巣内で精子がつくられていない状態のものをいい、そのほとんどが原因不明ですが、クラインフェルター症候群のように染色体異常を示す病態もあります。

その他いろいろな男性不妊症の原因

この他、生まれつき精管がない状態で、精巣内に精子が閉じ込められた状態となる先天性精管欠損や、精子が尿道ではなく膀胱に逆行する逆行性射精等も男性不妊の原因です。

自分で認識できる問題もありますが、検査しなければ精子の状態を把握できないこともあります。妊娠を希望する際には、男性も積極的に検査、治療などを行うことが重要です。婦人科やレディースクリニックではなく、泌尿器科でも男性不妊の治療は可能です。

あなたの精子に問題があるか確認する検査方法

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これまでみてきた通り、男性が妊活をはじめるときに、精子の状態を知ることはとても重要です。

検査する場合は高額な費用がかかるのでは?と思う男性も多いと思いますが、実は保険適用となるので1,000円程度の費用で済むことが多く、それほど大きな負担はかかりません。

病院での精液検査

精液検査は精液を採取して精子の量や濃度の状態を確認することが目的です。

検査前に3~4日ほど禁欲をし、検査当日に病院の個室でマスターベーションによって精液を採取し(自宅で採取し3時間以内に持ち込んでもいい)検査するだけです。検査結果によっては、さらに精密な検査や治療を行っていくことになります。

超音波検査

超音波検査は精子が通る道筋に異常がないか調べることを目的とした検査です。

精巣上体や精巣、前立腺や尿道などを超音波検査機によって検査します。場合によっては精索静脈瘤などが発見されることもあります。

ホルモン検査

ホルモン検査は血液の中の男性ホルモンの量や、下垂体ホルモンなどを調べることを目的とした検査です。

精子は下垂体ホルモンの値が低いと作りにくいといわれており、ホルモン検査によって造精機能障害が発見されるケースもあります。

また、先天性造精機能障害の場合は下垂体ホルモンが上昇するため、治療の指針となることもある大切な検査です。

抗精子抗体検査、染色体検査、精巣生検

精液の中に精子が見られない無精子症、精子の数が極端に少ない高度乏精子症は、抗精子抗体検査や染色体検査、精巣生検が必要となる場合があります。

血液を採取し抗精子抗体や染色体の検査を行ったり、「AZF」という遺伝子の検査、また生検によって精巣の組織を採取する検査も必要に応じて行われます。

精子問題の対応法として注目されているのが「顕微授精」

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本来的には、うえでご紹介した精子が正常でない問題を解決するために原因を検査し、治療するのが本筋ではあります。とはいえ、原因不明だったり、原因がわかってもそれらの治療が困難な場合や、自然妊娠が難しい場合には「顕微授精」を考えてみることも必要です。

顕微受精の特徴

自然に妊娠するためにはある程度の精子数が必要となりますが、もし射精した中に精子が見られないとしても、精巣や精巣管の中に精子を見つけることができれば、顕微授精によって妊娠できる可能性があります。

顕微受精の方法

顕微授精はいくつかの方法があり、その中でも「ICSI」と呼ばれる方法は、顕微鏡を見ながら専用の針を利用し卵子の細胞質の中に精子を1つ直接注入するという受精方法です。

また、「ZD方法」と呼ばれる卵子の透明帯に穴をあける方法や、「SUZI」と呼ばれる卵子の透明帯と卵子細胞質の間に精子を注入し受精を試みる方法があります。重症男性不妊症と呼ばれる高度な乏精子症や精子無力症、奇形精子症、不動精子症など、通常の体外受精では受精が難しい際に利用する受精方法です。

なお精液中の精子の数は安定しておらず、何回か検査を行うとばらつきがあると報告されています。

男性妊活は精子の状態を把握することが大切

男性妊活をおこなう場合「精子の状態」を把握することがとても大切です。

サプリメントを利用したり、生活習慣の改善などで気軽にはじめられる男性の妊活方法もありますが、本格的な病院での治療を考える場合は精子がどういった状態にあるのかを理解するのが妊活の第一歩です。

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