不妊に悩むカップルが増えるなかで、高額な不妊治療の費用を国や自治体が助成してくれる制度があるのをご存知でしょうか。
不妊治療の経済的負担を少しでも軽くするために、助成制度を正しく理解し、有効活用していきましょう。
不妊治療の助成金制度『特定不妊治療助成制度』とは?
不妊治療を行う際、多くの夫婦が不安に感じるのが「高額な治療費」です。治療方法にもよりますが、継続的な不妊治療を行う場合、100万円以上の金額がかかることもあります。
不妊治療を行う夫婦が非常に多くなっている背景を受け、不妊治療の経済的な負担を軽減するため、国や地方自治体が不妊治療に対する助成制度を取り入れています。
国や自治体は「不妊に悩む方への特定治療支援事業」として助成制度を取り入れており、窓口は各都道府県の申請窓口となっています。
2つの不妊治療に対する助成金制度
- 国が制度を定めて各都道府県が実施している体外受精・顕微授精に対する助成金制度
- 区市町村が独自に定めて実施している助成金制度
各金助成制度を利用するためには申請が必要となるため、申請の方法や必要な書類など知識を持つことが必要となります。
都道府県の不妊治療助成金をもらうには?
国が定めて各都道府県が実施している体外受精・顕微授精に関する助成金制度を利用する際には、以下であげるようないくつかの注意点があります。
- 都道府県によっては国の定める不妊治療助成制度に対し、さらに助成金額を上乗せしてくれる地域がある
- 申請は基本的に各都道府県が窓口になるが、大都市の場合、市が申請の窓口になっていることもあるので確認が必要
上記の注意点を確認し、助成金制度を利用するために必要な書類などをそろえて申請しましょう。
都道府県の不妊治療助成を受けるために必要なもの
不妊治療助成制度へ申し込むには、各都道府県ごとに指定している書類を揃えて提出する必要があります。自分で用意できる書類と、病院で書いてもらう必要がある書類が存在するため、事前にどのような書類が必要かを確認しておくと良いでしょう。
具体的には以下のような書類が必要となります。
- 特定不妊治療費助成申請書(申請する回数分が必要です)
- 特定不妊治療受診等証明書(病院で書いてもらう証明書 必要回数分必要です)
- 病院で支払い後にもらう領収書原本
- 3ヶ月以内の住民票
- 3ヶ月以内の戸籍謄本
- 住民税課税証明書の原本もしくは非課税証明書の原本
- 振込先の通帳もしくはキャッシュカードのコピー
- 口座振替依頼書(初回申請時のみ必要)
申請書は各都道府県の窓口で入手、もしくは各都道府県のホームページからダウンロードできる場合もあります。申請書は各都道府県によって様式が違うため、必ずご自身が住んでいる都道府県の種類で提出してください。
特定不妊治療費受診等証明書は本人の控えとしてコピーをとり、原本を提出する点に注意です。
都道府県の不妊治療助成制度を受けるための条件
各都道府県で不妊治療助成制度を受ける際には条件があります。具体的には、以下が不妊治療助成制度を受けるための条件です。
- 特定不妊治療(体外受精・顕微授精)以外の治療法によっては妊娠の見込みがないか又は極めて少ないと医師が診断したこと
- 指定医療機関で治療を受けたこと
- 申請日の前年(1月から5月までの申請日については前々年)の夫婦の合算の所得額が730万円未満であること
このうち「指定医療機関で治療を受けたこと」については、1回の治療初日から治療終了まで全過程において指定医療機関で治療を受けていることが前提です。
市区町村の不妊治療助成制度金をもらうには?
都道府県の不妊治療助成金ではなく市区町村独自の不妊治療助成制度の申請を行う場合、制度の内容が異なる場合があるため、必ず各市区町村の助成制度について確認が必要となります。
市区町村独自の不妊治療助成制度の例
- 「都道府県の助成制度に上乗せし、体外受精・顕微授精のみ助成を受けられる」
- 「通院にかかる交通費を助成する」
- 「人工授精、タイミング法など各ステップによって助成する」
上記のように各市区町村によって独自の不妊治療助成制度を実施している場合があります。また、市区町村によっては不妊治療費助成制度を導入していない地域もあります。
各市区町村独自の不妊治療費助成制度を利用する場合、自分の住む市区町村で助成制度が取り入れられているかを事前に確認しましょう。
市区町村の不妊治療助成制度を受けるために必要なものと条件
申請に必要な書類や条件もそれぞれ異なるため、各市区町村のホームページなどで確認しましょう。
不妊治療助成金はいくらもらえるの?
新鮮胚移植を実施 | 治療ステージA | 15万円 |
凍結胚移植を実施 | 治療ステージB | 15万円 |
以前に凍結した胚を解凍して胚移植を実施 | 治療ステージC | 7.5万円 |
体調不良により移植のめどが立たず治療終了 | 治療ステージD | |
採卵した卵が得られない、又は状態の良い卵が得られないため中止 | 治療ステージE | 15万円 |
受精できず、又は胚の分割停止、変性、多精子授精などの異常授精により中止 | 治療ステージF | |
卵胞が発育しない、又は排卵終了のため中止 | 治療ステージG | 対象外 |
採卵準備中、体調不良等により治療中止 | 治療ステージH |
上記のように治療ステージによって助成される金額が異なります。
卵胞が発育しない場合や排卵終了、または採卵準備中であったり、体調不良で治療を中止した場合は不妊治療費助成制度の対象外となるので注意が必要です。
不妊治療の助成金制度の利用回数は?
不妊治療は複数回にわたって継続的な治療が必要となるケースが多く、治療が複数回となれば経済的な負担も大きくなります。よって、不妊治療助成制度は継続的な経済的負担を軽減するために、複数回利用できる制度となっています。
妊娠を望んでいるのに妊娠することができない夫婦や不妊治療を行っている妊活中の夫婦にとって、経済的な負担が軽減できるのは非常に大きなメリットです。しかし、助成金制度をきちんと理解せずに不妊治療を行ってしまうと、本来は制度の対象で助成金を受け取れる場合だとしても、自己負担で高い費用を払い続けることになってしまう場合もあるかもしれません。
制度をきちんと利用するためにも、しっかりと知識を身につける必要があります。
男性の特定不妊助成金制度もあります!
男性の不妊治療「TESE」と「MESA」についても、2017年より不妊治療費助成制度が利用できるようになっています。
男性不妊の治療「TESA」と「MESA」について
TESEは無精子症や不動精子症といった症状を持つ男性の場合に、精巣から直接精子を回収する治療法です。
MESAは無精子症の中で閉塞性無精子症の男性の精巣上体から、精子を採取する治療法となります。
非閉塞性無精子症の患者さんはMESAでの採取が難しいため、TESAによる治療となります。他の治療法でもMESAで精子が回収できない場合にはTESAが有効となるため、現在はTESAが主流の治療方法となっているようです。
上記のような男性の特定不妊治療についても、1回につき15万円を上限として助成してもらうことが可能です。体外受精・顕微授精の助成に上積みしもらえる制度となるので、男性不妊治療の助成制度をあわせて活用すれば、経済的な負担をさらに軽減することが可能です。(ただしステージCについては対象外です)
利用する可能性のある不妊治療の助成金制度は知っておきましょう!
不妊治療の助成制度は不妊治療を行っている夫婦にのみ適用される制度です。しかし、今後思うように妊娠ができず不妊治療を受ける可能性はどのカップルにもあります。
不妊治療は複数回治療を行う場合も多く、経済的な負担が大きくなる場合もあるため、各都道府県や各市区町村の助成制度について事前に調べておくことをおすすめします。
事前に不妊治療の助成制度について正しい知識を持っていれば、いざ不妊治療が必要となってた場合でも落ち着いて対処できるはずです。